日によって気温差が大きいこの時期は、着るものの選択を間違うと体調を崩してしまいがち。賢い着衣選びが大切です。
さて、冬山登山やスノースポーツなど、アウトドアのアクティビティは気まぐれな自然と上手に向き合うことが必要です。真冬の厳しい自然環境の中で快適に活動するための装備の「常識」には、ウォームビズに役立つヒントがあるのでは? そこで、アウトドア用品メーカーである株式会社モンベル広報部の金森智課長代理に、冬山での着衣選びのポイントを伺ってきました。
まず、金森さんがアウトドアアクティビティにおける着衣選びの基本的なポイントとして教えてくれたのが「レイヤリング」というキーワードです。つまり「重ね着」のこと。
「例えば冬山登山でも、天候や状況によって温度環境はめまぐるしく変化します。防寒はもちろん大切ですが、天気がいい時などには運動によって汗だくになってしまうこともあり、下着が汗で濡れてからだが冷える『汗冷え』に注意しなければいけません。だから、状況に応じて脱いだり着たりしやすいものを選んで重ね着をして、着ているもので体感温度を調整するのが、アウトドアでの基本的なテクニックです」(金森さん)
レイヤリングの基本は、快適に過ごすための「機能」に配慮した3層の重ね着です。そのポイントをご紹介しておきましょう。
アウターレイヤー
雨や風を防ぎ、体感温度をあたたかく保ちます。透湿性に優れた一枚地のものから、ダウンなどの中綿が入ったより保温性が高いものなどのバリエーションがあります。
ミドルレイヤー
アウターレイヤーとベースレイヤーの間に着ることであたたかい空気の層を保ち、保温性を確保します。普段着で例を挙げると、フリースやインナーダウンなどと呼ばれる薄着のダウンなどがミドルレイヤーのバリエーションに区分できます。
ベースレイヤー
肌に直接触れるアンダーウェア。保温性はもちろん大切ですが、汗をすばやく吸収&拡散させる通気性などに配慮することも大切です。
では、具体的に「上手なレイヤリング」のためのポイントはあるのでしょうか。金森さんは「ベースレイヤー、つまりアンダーウェア選びが大切です」と教えてくれました。
「アンダーウェアは、温度環境が変化しても安易に脱ぐことができません。例えば、比較的あたたかい日に分厚いアンダーウェアを身に着けていると、暑すぎてひどく汗をかくことになってしまいます。私の場合、薄手、中厚手、厚手とバリエーションを用意してあって、その日の天気予報などを見ながら最適なものを選ぶようにしています」(金森さん)
化学繊維の一部やウール、コットンなどは湿気を吸うと発熱します。寒さ対策のために発熱素材のアンダーウェアを選んでも、暑すぎて汗をかき、逆に「汗冷え」するのはよくありません。アンダーウェア選びでは、素材や生地の厚さによってあたたかさや機能的な特徴に違いがあることをきちんと意識しておくことが大切です。
「アウトドアで一番の問題は、汗に濡れることで身体が冷えて、低体温症を起こしてしまうことです。それを防ぐために、汗の水分を拡散する吸水速乾性が高い化学繊維、もしくは水分を含んでも保温性が保てるウール素材のアンダーウェアを選ぶのがオススメです」(金森さん)
同じように見えるアンダーウェアでも、素材や厚さ、特徴のバリエーションはいろいろです。とくに素材の肌触りなどには個人の好みもありますから、いくつかの素材や厚さを試した上で、自分なりの「基準」を見つけておくと、失敗を減らしていくことができるでしょう。
「適切なアンダーウエアを着用することは、保温力を上げ、比較的薄着であっても快適に過ごすために役立ちます」と金森さん。自分に合ったアンダーウェアを活用して、上手にウォームビズを実践してください。
あわせて注意したいのがアウターレイヤーの選び方です。金森さんは、「分厚すぎるアウターレイヤーを選ぶと、暑すぎて困ることがあるので要注意」と教えてくれました。
「登山をしない方には意外でしょうが、冬山登山は暑いんです。防寒装備はもちろん大切ですが、それ以上に『汗冷え』対策が重要です。中綿入りの分厚いアウターを着ていると、登山中に暑すぎて大量の汗をかいてしまうので、透湿性を備えた薄手のアウターで雨や雪、風を防ぐのが基本です。一枚地のアウターでも、マイナス20℃くらいまでの冬山登山ならレイヤリングで十分に対応できます」(金森さん)
このインタビューを行った日も比較的あたたかく、金森さんは通勤途中の電車の中で「暑すぎて気分が悪くなってしまった方に遭遇した」とのこと。おしゃれのバリエーションとして厚手のダウンジャケットなどを着こなすのは悪いことではありませんが、寒い季節をより快適に過ごすためには、レイヤリングを理解して、必要十分なアウターを選ぶのがポイントです。可能であれば、アウターもアンダーウェアと同じように、薄手、中厚手、厚手のバリエーションを用意しておいて、その日の天候などに合わせて選ぶのが理想です。
さて、ここまでアウトドアを楽しむためのレイヤリングのポイントを紹介してきましたが、温度変化に対応するためのさらなるポイントとして、金森さんは「3つの首や頭をあたためること」を挙げてくれました。
「ウォームビズのウェブサイトでも紹介されていましたが、首、手首、足首という3つの首をあたためるように心掛ければ、比較的薄着でも、かなり寒い環境の中で快適に過ごすことができます。3つの首には表皮に近い部分に太い血管が通っているからですね。同じように、頭にも血管が集中しているので、寒い日には帽子を着用するのがオススメです。手袋やネックウォーマー、帽子などは暑くなった時に脱ぐのも簡単。太い血管があるので、暑い時の冷却効果も高いんですよ」(金森さん)
いずれにしても、その日の気温などの環境に合わせて、最適な着衣を工夫するのがアウトドアでは当然のこと。最近ではウール素材のウェストウォーマー(腹巻き)なども人気で、フリース素材などのあたたかい巻きスカートや、ひざ掛けなど、あたたかさのひと工夫をするためのアイテムが豊富なのも、アウトドア用品の魅力です。
「今回はウォームビズがテーマですが、夏のクールビズも含めて、オフィスでの服装はもっと自由でいいのではないかと思います。体感温度は人それぞれ。暖房や冷房を控えめにして、各個人が着るもので調整できるようにすれば、みんなが快適に過ごせます。
アウトドアで大切なのは『準備』です。天気予報などで状況を予測して、しっかりと対応できる着衣を用意するのは当然のこと。これは、防寒のためだけではありません。例えば夏の野山に出かける時、短パンとサンダルを用意しておけば、川などの水場があったとき、思い切って遊べますよね。そうすれば『このきれいな水を守りたい』という気持ちも生まれるはず。より多くの方に、アウトドアを楽しんでいただきたいですね」(金森さん)
金森さんの言葉通り、暖房控えめのモンベルのオフィスでは、それぞれ自由な服装に身を包んだ社員のみなさんが働いていらっしゃいました。みなさんの職場や学校など、規則や雰囲気はさまざまなので、一概に「自由でいい」というわけにはいかないでしょうが、レイヤリングの基本を理解して、ぜひ、自分なりの快適スタイルを見つけてください。
ウォームビズ期間は3月いっぱいで終了しますが、3月中でも暖房を使用する機会が多いのではないでしょうか。そんな時は、アウトドアのファッションを日常生活にも取り入れながら、暖房に頼り過ぎず快適に過ごせるといいですね!満員電車対策を考える上でも役立つと思います。
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