COP27(国連気候変動枠組条約第27回締約国会議)の結果概要について
2022年11月6日(日)から20日(日)まで、国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)がエジプト・シャルム・エル・シェイクで開催されました。
本稿では、COP27を振り返り、その結果概要についてご紹介します。
閣僚級セッション(ハイレベル・セグメント)
西村明宏環境大臣によるステートメント
COP27においては、第2週目に閣僚級のセッションとして「ハイレベル・セグメント」が開催され、各国の閣僚級よりステートメントが述べられました。日本からは、西村明宏環境大臣が参加し、ステートメントを行いました。
西村大臣からは、主要経済国に対して1.5℃目標と整合した排出削減目標(NDC;国が決定する貢献)を作成することを呼びかけるとともに、日本の主な取組として、①今後10年間で150兆円超のGX投資を実現すること、②脱炭素につながる新しい国民運動を開始したこと、③「アジア・ゼロエミッション共同体」構想の実現を目指すこと等について発信しました。
シャルム・エル・シェイク気候実施サミット
会議の1週目には、議長国エジプトの主催による「シャルム・エル・シェイク気候実施サミット」が開かれ、エルシーシ・エジプト大統領、来年のCOP28議長国アラブ首長国連邦(UAE)のムハンマド大統領等の各国首脳や、グテーレス国連事務総長から、気候変動問題が喫緊の課題であることや、対策の実施強化の必要性が指摘されました。
続いて、G7から英、仏、EUの首脳級を含む各地域の首脳級からステートメントが行われるとともに、6分野に特化した首脳級ラウンドテーブルが開催されました。なお、小池東京都知事がエジプト政府の招待によりハイレベル・ラウンドテーブルに参加しました。
COP27における交渉
緩和作業計画の策定
日本として重視していた、「緩和作業計画(2030年までの緩和の野心と実施を向上するための作業計画)」には、主に以下の内容が盛り込まれました。
- 1.5℃目標達成の重要性。
- 計画期間を2026年までとして毎年議題として取り上げて進捗を確認すること(2026年に期間延長の要否を検討)。
- 全てのセクターや分野横断的事項(パリ協定6条(市場メカニズム)の活用含む)等について対象とすること。
- 最低年2回のワークショップの開催と報告という一連のサイクル、非政府主体の関与、緩和作業計画の成果を閣僚級ラウンドテーブルで毎年議論すること。
作業計画の策定にかかる議論において、日本からは、全てのセクターを対象とすることや分野横断的事項の必要性を指摘し、最終的にはこれらが反映された形となりました。
各国・機関との閣僚級会合等
西村環境大臣は、計21の国・地域・国際機関※の閣僚級及び代表と二国・二者間会合を行いました。各会合では、COP27のカバー決定や緩和作業計画の合意・策定に向けた提案等、交渉議題の合意に向けた議論を行ったほか、気候変動対策の在り方等について意見交換を実施しました。
※計21の国・地域・国際機関: アラブ首長国連邦、イタリア、インド、ウクライナ、英国、エジプト、オーストラリア、オランダ、カナダ、シンガポール、中国、ドイツ、ニュージーランド、パプアニューギニア、フランス、マーシャル諸島、モンゴル、リトアニア、EU、UNFCCC事務局、国連ハビタット事務局
気候変動対策にかかる日本の取組の発信
ジャパン・パビリオンの設置
今次COPにおいても環境省が 「ジャパン・パビリオン」を会場内に設置し、日本の脱炭素技術や気候変動適応技術に関する展示や各種セミナーを通じて、日本の取組を発信しました。 今回、パビリオンでの実地展示としては、緩和、適応、CO2 有効利用、福島環境再生に関する計13の技術・取組を発信しました。 また、昨年に続きウェブ上で「ヴァーチャル・ジャパン・パビリオン」を設置し、計21の技術展示を行いました。
さらに、計43回のセミナーを実施し、日本が国内で取り組む気候変動対策や海外のパートナー国とともに取り組む脱炭素移行の取組に関して紹介するとともに、今後の活動や方向性について世界各国、各機関の関係者や専門家の方々とも議論を行いました。
具体的には、長期戦略・適応計画の策定・実行、温室効果ガス排出量の算定・報告、衛星観測、サステイナブルファイナンス、二国間クレジット制度(JCM)を含む市場メカニズム、コベネフィット型気候変動対策、エネルギートランジション、各セクター(水、交通、農業、森林等)における脱炭素化・強靱化、都市の気候行動、循環経済、フロン・メタン排出削減、自然に基づく解決策(NbS)、アフリカの廃棄物管理、アフリカの地熱開発、日本のネットゼロに向けたシナリオ分析、グリーントランスフォーメーション(GX)に向けた政府や企業の取組等、多岐にわたるテーマを取り扱いました。
- ジャパン・パビリオンの詳細についてはこちらのトピックス「COP27において「ジャパン・パビリオン」を開催します! ~日本が誇る脱炭素技術・気候変動適応技術の発信~」でご紹介しています
日本主導のイニシアティブの発表
パリ協定6条実施パートナーシップ
今次COPにおいては、日本が主導して、パリ協定6条(市場メカニズム)ルールの理解促進や研修の実施等、各国の能力構築を支援する「パリ協定6条実施パートナーシップ」を立ち上げました。2022年12月12日時点で46か国24機関が参加を表明しています。同パートナーシップにおいては、各国、国際機関等と連携しつつ、パリ協定6条に沿った市場メカニズムを世界的に拡大し、質の高い炭素市場を構築し、世界の温室効果ガスの更なる削減に貢献していきます。
ロス&ダメージ支援パッケージ
国際社会と協力しつつ、ロス&ダメージに対する支援を包括的に提供していくため、事前防災から災害支援・災害リスク保険までの技術的支援を包括的に提供する「日本政府の気候変動の悪影響に伴う損失及び損害(ロス&ダメージ)支援パッケージ」を公表しました。
本パッケージの一環として、新たに追加的に、アジア太平洋地域における官民連携による早期警戒システム導入促進イニシアティブを立ち上げました。
国際イニシアティブへの参加表明
そのほか、日本政府はCOP27期間中に立ち上げられた気候変動に関する以下の国際イニシアティブに参加を表明しました。
- 「気候適応の実施に関する国連世界早期警戒イニシアティブ」
- (11月7日、世界気象機関(WMO)主導)
- 「森林・気候のリーダーズ・パートナーシップ(FCLP: Forests and Climate Leaders' Partnership)」
- (11月7日、英国主導)
- 「気候のためのマングローブ・アライアンス」(MAC)
- (11月8日、アラブ首長国連邦・インドネシア主導)
- IDDI(Industrial Deep Decarbonization Initiative)(産業の脱炭素化に関するイニシアティブ)
- (11月11日、UNIDO主導)
- ※関連して、11月12日に米・EUが開催した「グローバル・メタン・プレッジ(GMP)閣僚級会合」に日本から外務省・赤堀地球規模課題審議官が登壇。
- 「Joint Declaration from Energy Importers and Exporters on Reducing Greenhouse Gas Emissions from Fossil Fuels」(化石燃料からのGHGの排出削減に取り組むイニシアティブ)
- (11月11日、米国主導)
- FAST(Food and Agriculture for Sustainable Transformation Initiative) (持続的な変革のための食料・農業に関するイニシアティブ)
- (11月12日、議長国エジプト主導)
- ※閣僚級会合に、日本から勝俣孝明農林水産副大臣がビデオメッセージで参加。
- GOWA:Global Offshore Wind Energy Alliance(洋上風力に係る官民プラットフォームであるグローバル洋上風力アライアンス)
- (11月15日、デンマーク主導)
- ※日本は本年9月に参加を表明済み。
- 「政府のネットゼロ・イニシアティブ」
- (11月17日、米国主導)
- 「CDR Launchpad」(DACや鉱物化等の技術を通じたネットゼロを達成することを目的)
- (11月17日、米国主導)
- 「次世代のための持続的な都市の強靭性(SURGe)」
- (11月17日、議長国エジプト・UN Habitat主導)
おわりに
COP27では、現在のエネルギー情勢下においても、昨年の「グラスゴー気候合意」から後退することなく、1.5度目標達成に向けて排出削減を進める世界全体の決意は揺るぎないことが示されました。また、各国の政府のみならず、民間企業、自治体、アカデミア、NGO等の様々なステークホルダーが、国際的に協力しながら、それぞれの切り口で気候変動対策を実施していくことも表明され、気候行動の広がりを実感できる機会となりました。
次回のCOP28は、来年2023年にアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催される予定です。国際的に気候行動の更なる拡大が期待される中、日本としても、培ってきた技術・経験をもとに国内外で気候変動対策を推進し、国際的な議論に貢献していきます。