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温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度における算定方法等が2024年度から変わります

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法制度・法規則

地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)に基づく、温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度における、算定対象活動及び算定方法が、2024年度報告(2023年度実績報告)から全面的に見直されます。また、報告方法等にも一部変更が生じます。

そこで本稿では、温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度による2024年度報告からの変更点について、その概要と具体的な見直し内容をご紹介します。

温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度の概要等は、下記リンク先よりご覧ください。

環境省「温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度」

温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度とは

温室効果ガスの排出の抑制を図るためには、まず、各事業者が自らの活動により排出される温室効果ガスの量を算定・把握することが基本です。これにより、排出抑制対策を立案・実施し、対策の効果をチェックして、新たな対策を策定し実行することが可能になります。

そこで、2006年4月1日から、温対法に基づき、温室効果ガスを一定量以上排出する事業者(特定排出者)に、自らの温室効果ガスの排出量を算定し、国に報告することが義務付けられました。国は報告された情報を集計し、公表することとされています。

この制度は、排出者自らが排出量を算定することによる自主的取組のための基盤の確立、また、情報の公表・可視化による国民・事業者全般の自主的取組の促進・気運の醸成を目的としています。

「温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度」について、特定排出者が自らの温室効果ガスの排出量を算定し、国に報告し、公表に至るまでの概要を図解
温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度の概要

2024年度報告(2023年度実績報告)からの主な変更点

温対法に基づき、事業者が事業所管大臣に報告する「温室効果ガス算定排出量」の算定方法の見直しについて、2022年1月~12月まで「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度における算定方法検討会」 において議論を行い、同年12月に中間取りまとめを公表し、これを踏まえて法令等の改正を行いました。

改正後の算定方法は、2024年度報告(2023年度実績報告)から適用されることとなります。

2024年度報告(2023年度実績報告)からの主な変更点は4点です。

  • ① 算定対象活動・排出係数・地球温暖化係数の見直し
  • ② 廃棄物の原燃料使用の位置づけの変更
  • ③ 電気及び熱に係る証書の使用の上限の設定
  • ④ 都市ガス及び熱の事業者別係数の導入

① 算定対象活動・排出係数・地球温暖化係数の見直し

2006年の本制度導入以降、国家インベントリ(日本からの温室効果ガス排出・吸収量)における算定対象活動は、定期的に見直しが行われてきた一方で、本制度上の算定対象活動はほとんど見直されてきませんでした。そこで今回、最新の国家インベントリを踏まえて全面的な見直しを行いました。

見直しにあたっては、算定対象活動を追加したことに加え、既存の算定対象活動について排出係数の区分の見直し数値の更新を行いました。また、CO2換算に用いる地球温暖化係数(GWP)についても更新しました。

CO2換算に用いる地球温暖化係数(GWP)(更新後)
# 温室効果ガス 地球温暖化係数
更新後 更新前
1 二酸化炭素 CO2 1
2 メタン CH4 28 25
3 一酸化二窒素 N2O 265 298
4 ハイドロフルオロカーボン HFC
トリフルオロメタン HFC-23 12,400 14,800
ジフルオロメタン HFC-32 677 675
フルオロメタン HFC-41 116 92
1・1・1・2・2-ペンタフルオロエタン HFC-125 3,170 3,500
1・1・2・2-テトラフルオロエタン HFC-134 1,120 1,100
1・1・1・2-テトラフルオロエタン HFC-134a 1,300 1,430
1・1・2-トリフルオロエタン HFC-143 328 353
1・1・1-トリフルオロエタン HFC-143a 4,800 4,470
1・2-ジフルオロエタン HFC-152 16 53
1・1-ジフルオロエタン HFC-152a 138 124
フルオロエタン HFC-161 4 12
1・1・1・2・3・3・3-ヘプタフルオロプロパン HFC-227ea 3,350 3,220
1・1・1・3・3・3-ヘキサフルオロプロパン HFC-236fa 8,060 9,810
1・1・1・2・3・3-ヘキサフルオロプロパン HFC-236ea 1,330 1,370
1・1・1・2・2・3-ヘキサフルオロプロパン HFC-236cb 1,210 1,340
1・1・2・2・3-ペンタフルオロプロパン HFC-245ca 716 693
1・1・1・3・3-ペンタフルオロプロパン HFC-245fa 858 1,030
1・1・1・3・3-ペンタフルオロブタン HFC-365mfc 804 794
1・1・1・2・3・4・4・5・5・5-デカフルオロペンタン HFC-43-10mee 1,650 1,640
5 パーフルオロカーボン PFC
パーフルオロメタン PFC-14 6,630 7,390
パーフルオロエタン PFC-116 11,100 12,200
パーフルオロプロパン PFC-218 8,900 8,830
パーフルオロシクロプロパン PFC-c216 9,200 17,340
パーフルオロブタン PFC-31-10 9,200 8,860
パーフルオロシクロブタン PFC-c318 9,540 10,300
パーフルオロペンタン PFC-41-12 8,550 9,160
パーフルオロヘキサン PFC-51-14 7,910 9,300
パーフルオロデカリン PFC-91-18 7,190 7,500
6 六ふっ化硫黄 SF6 23,500 22,800
7 三ふっ化窒素 NF3 16,100 17,200

地球温暖化係数の見直し後の算定対象活動

新たに算定対象に追加した活動は赤字で追加、排出係数の区分を見直した活動は青字で見直し、数値のみを更新した活動は緑字で更新、削除された活動は取り消し線で削除、変更のない活動は黒字で記載しています。

エネルギー起源二酸化炭素(CO2
見直し都市ガスの使用
見直し燃料の使用
他人から供給された電気の使用
見直し他人から供給された熱の使用
非エネルギー起源二酸化炭素(CO2
追加石炭の生産
原油又は天然ガスの試掘
原油又は天然ガスの性状に関する試験の実施
見直し原油又は天然ガスの生産
追加原油の輸送
追加地熱発電施設における蒸気の生産
更新セメントの製造
生石灰の製造
見直しソーダ石灰ガラスの製造
追加炭酸塩の使用
更新アンモニアの製造
シリコンカーバイドの製造
更新カルシウムカーバイドの製造
追加二酸化チタンの製造
ソーダ灰の製造
見直しエチレン等の製造
カルシウムカーバイドを原料としたアセチレンの使用
追加電気炉における炭素電極の使用
鉄鋼の製造における鉱物の使用
追加鉄鋼の製造において生じるガスの燃焼(フレアリング)
追加潤滑油等の使用
追加非メタン揮発性有機化合物(NMVOC)を含む溶剤の焼却
追加ドライアイスの製造
ドライアイスの使用
追加炭酸ガスのボンベへの封入
追加炭酸ガスの使用
追加耕地における肥料の使用
見直し廃棄物の焼却
メタン(CH4
見直し燃料の使用
追加コークスの製造
更新電気炉における電気の使用
更新石炭の生産
追加木炭の製造
原油又は天然ガスの試掘
原油又は天然ガスの性状に関する試験の実施
見直し原油又は天然ガスの生産
追加原油の輸送
更新原油の精製
追加天然ガスの輸送
都市ガスの製造
追加都市ガスの供給
追加地熱発電施設における蒸気の生産
追加エチレン等の製造
更新家畜の飼養(消化管内発酵)
見直し家畜の排せつ物の管理
更新稲作
見直し農業廃棄物の焼却
見直し廃棄物の埋立処分
追加堆肥の生産
見直し廃棄物の焼却
見直し工場廃水の処理
見直し下水、し尿等の処理
一酸化二窒素(N2O)
見直し燃料の使用
追加木炭の製造
原油又は天然ガスの性状に関する試験の実施
見直し原油又は天然ガスの生産
見直しアジピン酸等の製造
麻酔剤の使用
追加半導体素子等の製造
見直し家畜の排せつ物の管理
見直し耕地における肥料の使用
見直し耕地における農作物の残さの肥料としての使用
追加林地における肥料の使用
見直し農業廃棄物の焼却
追加堆肥の生産
見直し廃棄物の焼却
見直し工場廃水の処理
見直し下水、し尿等の処理
ハイドロフルオロカーボン(HFC)
更新クロロジフルオロメタンの製造
更新ハイドロフルオロカーボンの製造
追加マグネシウム合金の鋳造
見直し半導体素子等の製造におけるHFC又はPFCの使用
更新冷凍空気調和機器の製造におけるHFCの封入
更新業務用冷凍空気調和機器の使用開始におけるHFCの封入
更新業務用冷凍空気調和機器の整備におけるHFCの回収及び封入
見直し家庭用電気冷蔵庫等HFC封入製品の廃棄におけるHFCの回収
プラスチック製造における発泡剤としてのHFCの使用
追加噴霧器の製造におけるHFCの封入
噴霧器の使用
溶剤等の用途へのHFCの使用
パーフルオロカーボン(PFC)
削除アルミニウムの製造
更新パーフルオロカーボンの製造
見直し半導体素子等の製造におけるPFC、HFC又はNF3の使用
追加光電池の製造におけるPFCの使用
溶剤等の用途へのPFCの使用
追加鉄道事業又は軌道事業用整流器の廃棄
六ふっ化硫黄(SF6
更新六ふっ化硫黄の製造
マグネシウム合金の鋳造
見直し半導体素子等の製造におけるSF6の使用
更新変圧器等電気機械器具の製造及び使用の開始におけるSF6の封入
変圧器等電気機械器具の使用
変圧器等電気機械器具の点検におけるSF6の回収
変圧器等電気機械器具の廃棄におけるSF6の回収
追加粒子加速器の使用
三ふっ化窒素(NF3
更新三ふっ化窒素の製造
半導体素子等の製造におけるNF3の使用

②廃棄物の原燃料使用の位置づけの変更

2022年に行われた、エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律(省エネ法)の改正によってエネルギーの定義が非化石エネルギーに拡大したことを受け、廃棄物の燃料利用又は廃棄物燃料の使用により発生する二酸化炭素がエネルギー起源CO2に位置付けられました。

これに伴い、特定排出事業者において行われた算定排出量算定期間におけるエネルギー起源CO2に係る報告について、様式第1 第1表に「廃棄物の原燃料使用に伴うエネルギー起源CO2」の欄を新設しました。

上記の「廃棄物の原燃料使用の位置づけの変更」における新設箇所の位置づけについてのイメージ図
新設箇所の位置づけについて

様式第1第1表における新設箇所

  • 様式第1 第1表に「②廃棄物の原燃料使用に伴うエネルギー起源CO2」を新設しました。
  • また、特定事業所についても、別紙第1表において同内容を新設しました。
「様式第1第1表における新設箇所」の画像を拡大表示

エネルギー起源CO2と非エネルギー起源CO2の区別について

廃棄物の焼却において燃料利用を主目的とする場合と、廃棄物由来の燃料を使用する場合はエネルギー起源CO2として、その他の場合は非エネルギー起源CO2として報告します。

燃料としての廃棄物の利用、廃棄物由来の燃料(RPF、RDF等)の使用、熱回収を伴う廃棄物の焼却の場合は、調整後排出量への計上は不要です。

エネルギー起源CO2と非エネルギー起源CO2の区別について
廃棄物の焼却方法 CO2排出量の計上先
(基礎排出量)
調整後排出量における扱い
燃料としての廃棄物の利用 エネ起CO2 計上不要
廃棄物由来の燃料(RPF、RDF等)の使用
熱回収を伴う廃棄物の焼却 非エネ起CO2 計上不要
廃棄物の単純焼却 計上必要

③電気及び熱に係る証書の使用の上限の設定

調整後温室効果ガス排出量の調整における、特定排出者が購入した証書による国内認証排出削減量の控除について、電力に係る証書は、他人から供給された電気の使用に伴う二酸化炭素排出量、熱に係る証書は、他人から供給された熱の使用に伴う二酸化炭素排出量が上限となります。

これを踏まえて、それぞれを特定排出者の説明事項の一つに追加するとともに、様式第1 第5表の3として「国内認証排出削減量のうち、グリーンエネルギー二酸化炭素削減相当量に係る情報」を新設しました。

上記の電気及び熱に係る証書の使用の上限の設定、控除の位置づけについてのイメージ図
控除の位置づけについて

様式第1第5表の変更点

  • 様式第1 第5表の3として「国内認証排出削減量のうち、グリーンエネルギー二酸化炭素削減相当量に係る情報」 を新設しました。
「様式第1第5表の変更点」の画像を拡大表示

④都市ガス及び熱の事業者別係数の導入

ガス事業者及び熱供給事業者について、電気事業者と同様に基礎排出係数・調整後排出係数を温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度のウェブサイトにて公表します。また、料金メニュー別の排出係数も併せて、報告年度の6月中に公表します。

事業者別の係数が公表されている都市ガス及び熱を利用する際には、公表された係数に基づき排出量を計算する必要があることから、様式第1 第3表に、都市ガス・他人から供給された熱の使用に伴う温室効果ガス算定排出量について、基礎排出係数・調整後排出係数を記載する欄を新設しました。

また、事業所としての報告も同様に対応する必要があることから、様式第1 別紙第2表に、都市ガス及び他人から供給された熱の使用に伴う二酸化炭素の温室効果ガス算定排出量の算定に用いた係数を記載する欄を新設しました。

様式第1第3表、別紙第2表における新設箇所①

  • 様式第1 第3表の1として「エネルギーの使用に伴って発生する二酸化炭素のうち、都市ガスの使用に伴う二酸化炭素の温室効果ガス算定排出量の算定に用いた係数」を新設しました。
  • また、様式第1 第3表の2として「調整後温室効果ガス排出量のうち、都市ガスの使用に伴う二酸化炭素の算定に用いた係数」を新設しました。
「様式第1第3表、別紙第2表における新設箇所①」の画像を拡大表示

様式第1第3表、別紙第2表における新設箇所②

  • 様式第1 第3表の5として「エネルギーの使用に伴って発生する二酸化炭素のうち、他人から供給された熱の使用に伴う二酸化炭素の温室効果ガス算定排出量の算定に用いた係数」を新設しました。
  • また、様式第1 第3表の6として「調整後温室効果ガス排出量のうち、他人から供給された熱の使用に伴う二酸化炭素の算定に用いた係数」を新設しました。
「様式第1第3表、別紙第2表における新設箇所②」の画像を拡大表示

様式第1第3表、別紙第2表における新設箇所③

  • 様式第1 別紙第2表の1として「エネルギーの使用に伴って発生する二酸化炭素のうち、都市ガスの使用に伴う二酸化炭素の温室効果ガス算定排出量の算定に用いた係数」を新設しました。
  • また、様式第1 別紙第2表の3として「エネルギーの使用に伴って発生する二酸化炭素のうち、他人から供給された熱の使用に伴う二酸化炭素の温室効果ガス算定排出量の算定に用いた係数」を新設しました。
「様式第1第3表、別紙第2表における新設箇所③」の画像を拡大表示
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