気候変動対策にかかる日本の取組の発信
日本主導のイニシアティブの発表
NDCと透明性向上に向けた共同行動
世界で気候変動緩和に向けた取組推進が求められる中、日本政府は、「NDCと透明性向上に向けた共同行動」を発表しました。これは、各国がNDC(国の決定に基づく貢献)に基づき緩和の取組を着実に実施し、透明性を確保してその実施状況を世界と共有できるよう、国際的な協力の下での共同行動を促進するものです。
イニシアティブでは、
- 「ネットゼロ」「サーキュラーエコノミー」「ネイチャーポジティブ」のシナジーアプローチ
- 二国間クレジット(JCM)といった、国際協力や市場メカニズムを通じた緩和の拡大
- COP29議長国アゼルバイジャンのイニシアティブである「バクー世界気候透明性プラットフォーム(BTP)」と連携した世界の透明性向上の促進
の3つの共同行動を掲げています。
ジャパン・パビリオンでの発信
COP29にて、環境省は「ジャパン・パビリオン」を会場内に設置し、再エネ・省エネ・適応・炭素利用・資源循環・生物多様性の保全・汚染の防止、福島の現状といった、幅広い技術・取組を発信しました。
今回は、パビリオンでの実地展示として、計11社が出展し、技術・取組を発信しました。
また、今回もウェブ上でバーチャル展示を設置し、39社の技術展示等を行いました。
ジャパン・パビリオンでは、展示のほか、温室効果ガス観測技術衛星(GOSAT)、JCMパートナー国会合、アジアでの気候情報開示、アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)、トランジション・ファイナンス、削減貢献量、産業脱炭素化等など約40のセミナーが開催されました。連日盛況で、100か国を超える国々の人が来場しました。
ジャパン・パビリオンでの各種展示・各種セミナーの詳細については以下の記事をご覧ください。
国際イニシアティブへの参加表明
そのほか、日本政府はCOP29期間中に、気候変動に関する以下の国際イニシアティブに参加を表明しました。
日本政府がCOP29期間中に参加した気候変動に関する国際イニシアティブ一覧
11 月 12 日
- Methane Abatement Partnership Roadmap(メタン削減パートナーシップロードマップ)
- EU が主導し、石油・天然ガスのサプライチェーン全体でメタン排出を最小限に抑えることを目的としています
11 月 15 日
- 「グローバルなエネルギー貯蔵及びグリッ ド」宣言
- 議長国アゼルバイジャンが主導し、再生可能エネルギー活用に欠かせない蓄電池や水素貯蔵量を、2030年までに2022年度比6倍の1500GWに増やす目標を取り交わしました。
- 水素宣言
- グリーン水素の生産量を大幅に増加させるとともに、化石燃料から生産される水素を削減することを目標としています。
- 「グリーンエネルギーゾーン・コリドー」宣言
- 支援が必要なコミュニティがグリーンエネルギーを接続できるよう、より大規模な地域間電力送配電網の構築を促進することを目指しています。
11 月 18 日
- バクー世界気候透明性プラットフォーム(BTP)
- 議長国アゼルバイジャンが主導しており、パリ協定の、強化された透明性枠組みの締約国が協力し、途上国の隔年透明性報告書(BTP: Biennial Transparency Reports)の提出を支援することを目的としています。
11 月 19 日
- 有機性廃棄物からのメタン削減に関する COP29 宣言
- 賛同国は、NDCで有機性廃棄物からのメタン削減量のセクター別目標を設定するとともに、達成のための具体政策とロードマップを開始することとなっています。
- 「農業者のためのバクー・ハーモニア気候 イニシアティチブ」
- 議長国アゼルバイジャンが主導しており、農業における適応と緩和を通じて気候変動に取り組むための協力を促進するイニシアティブです。
11 月 20 日
- 「レジリエントで健康な都市へのマルチセクター行動経路(MAP)に関するCOP29 宣言」
- 議長国アゼルバイジャンが主導しており、都市における気候課題に対応するため、マルチセクター間での協力を強化することを目指しています。
- 「観光における気候変動対策強化に関するCOP29 宣言」
- 議長国アゼルバイジャンが主導しており、NDCにおける観光業のセクター別目標設定をはじめ、観光業における排出量を削減し、レジリエンスを強化することを目指しています。
11 月 21 日
- 「水と気候に係る行動に関する COP29 宣言」
- 議長国アゼルバイジャンが主導し、今後国連環境計画(UNEP)が事務局を務める 「水と気候に係る行動に関するバクー対話」の設置等を位置づけています。
おわりに
COP29では、2035年までの途上国への気候資金目標額について、少なくとも年間3,000億ドルの資金拠出を行うことで合意しました。また、長年合意に達していなかった、パリ協定第6条についても合意がなされ、第6条に基づく国際的な炭素クレジット取引の円滑な実施に向け、前進しました。
次回のCOP30の開催地は、ブラジルのベレンで、2025年11月に開催予定です。
今後とも環境省は日本政府の一員として、1.5℃目標の実現に向けた取組を推進し、国際的な議論を先導してまいります。
コラム
アゼルバイジャンはカスピ海の西側に位置し、1年を通じて強い風の吹く日が多いものの、概ね穏やかで、短いながら春と秋を挟む四季のある国です。
石油や天然ガスの資源国で、地中から湧出するガスにより数千年も燃え続けていると言われる火があることなどから「火の国」とも呼ばれ、拝火教(ゾロアスター教)の神殿があります。ただ、現在は国民の多くがイスラム教徒です。
首都バクーはカスピ海に面した都市で、オリンピックを誘致するため建設されたスタジアムが、今回のCOP29の会場となりました。(開催実績はありません)
人柄もよく、食事も美味しく、快適に滞在することができました。2週間の会期中、1日だけある休日の夜、レストランで囲んだアゼルバイジャンの名物料理『Şah plov(パイ生地の中にチキンピラフが入ったもの)』と、安くておいしいアゼルバイジャンワインが忘れられません。
※写真内、ケーキのように見えるのが Şah plov。ナイフを入れると、中からチキンピラフがあふれ出ます(環境省撮影)