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グリーン志向の消費行動について

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普及啓発

皆さんは、「グリーン志向消費」や「エシカル消費」と言われて、どんな行動を思い浮かべるでしょうか。

消費者庁では、人や環境等に配慮した消費行動であるエシカル消費の普及・啓発を進めています。2025年5月の消費者月間では、エシカル消費の中でも特に環境面に着目し、消費者が環境に配慮された商品・サービスを理解し選択する「グリーン志向の消費行動」について、啓発等を行いました。

今回は、6月の環境月間とも親和する「グリーン志向の消費行動」について、一緒に考えていきましょう。

「グリーン志向の消費行動」の現状

今年もすでに夏日を観測していますが、地球温暖化はますます進み、日本の年平均気温は長期的に上昇しており、最高気温が35℃以上となる猛暑日の日数も増加傾向にあります。

1. 気象庁 「日本の年平均気温偏差の経年変化」(1898年から2024年まで)により作成
2. 各年の平均気温の基準値(1991年から2020年までの30年間平均値)からの偏差を示している

出典: 気象庁「日本の年平均気温偏差の経年変化(1898〜2024年)」
棒グラフ(緑)は各年の年間日数を示す(全国13地点における平均で1地点あたりの値)。
折れ線(青)は5年移動平均値、直線(赤)は長期変化傾向(この期間の平均的な変化傾向)を示す。

出典: 気象庁「[全国13地点平均]日最高気温35℃以上の年間日数(猛暑日)」(1910~2024年)

※日本の気候変動についての詳細は以下の記事をご参照ください。

一方で、消費者の動向においては、気候変動などの地球環境問題を始めとする社会課題に対する関心は一定程度高まりが見られるものの、人・社会・地域・環境に配慮した消費行動(エシカル消費)を実践しているという消費者はいまだ一部に留まっています。

「社会課題・社会貢献活動に関する関心」の意識調査の中で、「気候変動」や「地球環境問題」に関心のある人は約7割。
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「エシカル消費につながる商品・サービスの購入意向」の意識調査の中で、「エシカル消費につながる商品・サービスを購入したい」と回答した人は約5割。
「エシカル消費につながる行動の実践度合い」の意識調査の中で、「エシカル消費につながる行動を実践している」と回答した人は約3人に1人。
出典: 消費者庁「令和6年度第3回消費生活意識調査」(2024年10月実施)

グリーン志向の消費行動に関するワーキングチームについて

このような現状を受け、消費者庁では、消費者に、環境に配慮された商品・サービスを理解し意識的に選好するなどのグリーン志向の消費行動を促すため、2024年11月から2025年2月にかけて、グリーン志向の消費行動に関するワーキングチームにおいて議論を行いました。

ワーキングチームでは、消費者向け商品・サービスを扱い、消費者のアクションにより環境負荷低減を図る取組等を行っている事業者、消費行動の分析や行動変容に向けた取組を実施している事業者及び民間団体からのヒアリングを実施し、委員による議論を行ったうえで、2025年2月に取りまとめを公表しました。

取りまとめでは、消費者の環境意識や行動の現状とその背景について整理するとともに、消費者の行動変容を促すために必要な視点等を示しています。

参照元:グリーン志向の消費行動に関するワーキングチーム取りまとめ 概要

以下の動画にて、ワーキングチームの取りまとめを解説しているので、こちらもご覧ください。

YouTube「17分で解説!グリーン志向の消費行動に関するワーキングチームとりまとめ動画:消費者庁」の動画へ
「17分で解説!グリーン志向の消費行動に関するワーキングチームとりまとめ動画:消費者庁」の動画を再生(YouTubeに移動します)

また、今回の取りまとめでは、特に事業者が消費者の行動変容を起こすために必要な視点と、消費者自身に考えてほしい「『グリーン志向』の消費者 3箇条」を整理しているので、今後の事業や行動の参考にしてみてください。

消費者の行動変容を起こすために必要な視点(詳細はこちらのPDF:消費者の行動変容を促すために必要な事業者の視点
「グリーン志向」の消費者3箇条(詳細はこちらのPDF:「グリーン志向」の消費者 3箇条

5月の消費者月間の取組

消費者月間である5月には、統一テーマを、「明日の地球を救うため、消費者にできること グリーン志向消費~どのグリーンにする?~」と掲げ、ワーキングチームの取りまとめを踏まえて、消費者のグリーン志向の消費行動を促進する取組を行いました。

(1)適切な危機感・問題意識の共有

環境問題を自分事化し、グリーン志向の消費行動を実践する動機を形成するためには、適切な危機感の共有が必要です。「気候変動。それは遠い未来ではなく今そこにある「危機」」の啓発リーフレットでは、身近な変化を「危機」として分かりやすく伝えておりますので、ぜひご活用ください。

気候変動。それは遠い未来ではなく今そこにある「危機」」の啓発リーフレット

これらの身近な変化・危機は、他人事でしょうか。みなさんもきっと感じているはずです。
気候変動は遠い未来のことではありません。今から手を打たなければリスクは大きくなります。
普段の行動をグリーン志向の消費行動に少し変えることで、未来が大きく変わるかもしれません。

(2)グリーン志向消費に関する行動チェックリスト

「グリーン志向の消費行動」を始めようと思っても、何がグリーン志向の消費行動なのか分からない方も多いと思います。

そこで、消費者が日常生活の中で行うことができるグリーン志向の消費行動が分かる、行動チェックリストを作成しました。具体的な行動の他、その行動に関する社会的背景の解説や行動を実践するためのヒントを公表しています。

※上記リンクはいずれも「グリーン志向消費に関する行動チェックリスト」の各項目の解説箇所へリンクします。

消費者庁「グリーン志向消費に関する行動チェックリスト

ぜひ、このチェックリストの中から自分ができるグリーン志向の消費行動を探し、実践していきましょう。

(3)消費者月間シンポジウム

2025年5月19日に統一テーマに沿った消費者月間シンポジウムを開催し、東京大学未来ビジョン研究センターの江守正多教授に地球の気候変動の現状に関する基調講演を行っていただいたほか、消費者庁食品ロス削減推進アンバサダーのお笑い芸人 ロバートの馬場裕之氏等の登壇者をお招きして、気候変動の危機感を共有し、日常生活の中で行えるグリーン志向の消費行動について考えました。

消費者月間シンポジウムの様子

基調講演では江守教授から、私たち消費者にできることは、社会の技術や産業、制度等の仕組みの変化が必要であることを理解し、その変化に対して、進め方に疑問があれば意見を言い、その進め方が足りないと思えば声を上げるなどして、賛成の方向に進めることが重要。自分一人の行動は大きくないと思っても、社会の仕組みをグリーンにするためのメッセージとして、消費を通じてグリーンなものを選択し、周囲にグリーンなものを買って良かったことを広めたりして、最終的には自身の行動が社会の仕組みを変えることを意識して、日々の消費行動を行うことが大切。とお話しいただきました。


シンポジウムの様子は、以下リンクよりご覧いただけます。

令和7年版消費者白書の閣議決定

2025年6月13日に閣議決定した令和7年版消費者白書では、「グリーン志向の消費行動~消費から変えていく、私たちの生活と地球環境~」を特集テーマとしました。特集では、環境問題に対する現状の課題と取組状況を概説し、消費者の環境問題に対する意識と行動を分析しつつ、持続可能な社会の実現に向けた消費者の行動変容を促すための課題や今後の方向性について展望しています。

また、本文では言及しきれない様々なトピックスをコラムとして紹介しています。(以下、コラムの例)

様々な企業による環境問題への取組と課題

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環境配慮商品を集めた売場

消費者と接点の多い業界である小売業では、環境に配慮した商品がどれなのかを消費者に分かりやすく伝える工夫等、消費者に働き掛けるための様々なきっかけ作りが進められています。例えば、近年はスーパー等でオーガニック食品を始めとした環境に配慮した商品だけを集めた売場を目にする機会も増えてきています。

一方、消費者の中には、企業による様々な取組を生活の中で目にするうちに、「エコ疲れ」を感じる方もいるかもしれません。そこで、商品購入等から満足感(面白さ・楽しさ・かっこよさ)を感じてもらい、無理なく、楽しんで環境に配慮した消費ができるような工夫も行われています。

例えば、「デカボスコア」では、商品製造時のCO2排出量の削減を「○%オフ」という直感的に理解しやすい形で示すことで、消費者の興味を高め、購入促進と環境問題への関心につなげています。

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持続可能な社会に向けて消費者が取り組めること(末吉里花氏)

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一般社団法人エシカル協会
代表理事 末吉里花 氏

持続可能な社会に変えていくために消費者ができることの一つとして「商品の選択」があります。

「商品の選択」は社会に対して消費者の意思を伝える「投票」のようなもので、消費者がエシカルな商品を選択すれば、そのような商品に需要があることが企業に伝わり、社会や環境に配慮した商品開発を促すことにつながります。また、エシカルな商品が市場に増えれば、多くの人の目に留まる可能性も高まり、他者の意識を変えるきっかけとなるかもしれません。

このように、一人の消費者の小さな行動が社会を動かすきっかけとなり、皆の行動につながれば世界を変える大きな原動力になるのです。

ぜひ、消費者白書をご覧いただき、グリーン志向の消費行動について考える機会としてみてください。

おわりに

グリーン志向の消費行動」や「エシカル消費」について、理解が深まりましたでしょうか。

気候変動は今この瞬間も進行し、私たちの身近な危機となっています。

一人ひとりの力は小さいかもしれませんが、「私一人が何かをしても……」ではなく、それぞれの選択が、日本の、そして地球の未来につながっていくよう、身近なところから「グリーン志向の消費行動」を始めることが重要です。

また、グリーン志向の消費行動の促進のためには、消費者の行動変容と事業者による環境配慮の取組を両輪で進めることも不可欠です。
これを機会に消費者の皆様、並びに事業者の皆様も、「グリーン志向の消費行動」について、意識的に選考し、実践してみてください。

脱炭素ポータルでは、環境省内だけでなく、消費者庁など関係組織とも連携し、より効果的な情報発信に取り組んでいきます。