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再生可能エネルギーのススメ「自家消費型太陽光発電」②
意識改革、新たな事業展開、企業価値の向上…。先進企業に見る、再生可能エネルギー挑戦がもたらすものとは

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普及啓発
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「2050年までの脱炭素社会の実現」を目指し、政府は再生可能エネルギー(再エネ)を主力電源として最大限導入していく方針を示しています。柱となるのは太陽光発電です。特に中小企業での「自家消費型太陽光発電」の導入拡大は、目標達成の成否を占う重要なカギを握っています。

大手企業に比べて再エネ化が進んでいないと言われる中小企業。二の足を踏む企業も少なくない中、積極的に導入を進めた企業は、どのような思いで一歩を踏み出し、実際にどんな効果を上げているのでしょうか。今回は、企業や自治体などの使用電力100%再エネ化を目指す「再エネ100宣言 RE Action」(アールイーアクション)に参加した企業の実例を通して、そのメリットや課題について考えます。

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米アップル社の方針に衝撃受ける

岡山市の東部、JR東岡山駅から車で約5分のところに、「備前発条」の本社・工場はあります。旭川の氾濫から岡山城下を守るために築造された「百間川」のほとりに位置し、東には「備前富士」とも称される芥子山を臨みます。

備前発条は1949年に「山根スプリング製作所」として岡山県総社市で創業。自動車部品の開発・製造を得意としており、特にアームレスト、オットマン、ヘッドレストといったシート部品は大手自動車メーカーにも広く採用されています。

代表取締役社長の山根教代さんが、再エネへの転換に舵を切ったのは2020年頃。米アップル社の方針に衝撃を受けたことがきっかけだったといいます。

「米アップル社が『脱炭素方針』を示し、取引先に対して再エネ電力の使用を義務付けることを知りました。脱炭素に取り組んでいないと、取引しないという強いメッセージで、強い衝撃を受けました。再エネも含め脱炭素化を進めないと、企業として生き残れないと直感的に危機感を覚えたのです」

備前発条は早速、脱炭素に向けて再エネへの転換にとりかかります。ただ、全く一からのスタート。キックオフメンバーの1人、企画室室長付の出射真一さんは、当時を振り返ります。

「『CO2ポテンシャル診断』を活用し、提案されたプランを、電気に詳しい保全部隊の社員が精査していきました。二酸化炭素(CO2)をどのくらい削減できているのか、算出の仕方や最初の基準づくりといったところが、最も苦労しました」

備前発条本社の第3工場屋上に設置された太陽光パネルの写真
備前発条本社の第3工場屋上に設置された太陽光パネル

炭素強度は半分に改善

現在、岡山市の本社・工場では、三つある工場のうち一つの屋根にPPA※により太陽光パネルを設置し、全体の約8%を賄っています。調達したCO2フリー電力を加えると、使用電力の約4分の1が再エネという計算になります。さらに、福岡県豊前市の九州工場ではCO2フリー電力の調達により、100%再エネ転換を実現しています。

これにより、製品を生み出すときに、どれだけCO2を出したかを示す指標である「炭素強度」(CO2排出量原単位)は、再エネ転換に取り組む以前の2019年と比べて、2025年にはほぼ半減しました。

※PPA…Power Purchase Agreement(電力購入契約) の略。企業・自治体が保有する施設の屋根や遊休地を事業者が借り、無償で発電設備を設置し、発電した電気を企業・自治体に販売する事業。

知名度、信頼性がアップ

再エネへの転換を始めて約5年。社長の山根さんは「メリットの方がはるかに大きい」と強調します。PPAの活用で初期投資がほとんどかからなかった一方で、会社の知名度や信頼性のアップにつながっているというのです。

「昨年だけで県内外で5回、講演する機会をいただきました。活動を通じて、これまでお付き合いのなかった企業とのつながりも広がっていきました」

備前発条では再エネへの転換など脱炭素に向けた活動を会社のホームページなどで積極的に発信しています。多くの中小企業が採用活動で苦労する中、ホームページで備前発条の再エネへの取り組みを知り、興味を持った学生が訪ねてくるなど、うれしい効果が表れています。

自動車業界でも脱炭素の動きは急加速しています。

備前発条が製品を納品している「ティア1※」と呼ばれる企業からも、きちんと根拠となる数字を示した資料の提出を求められ、できない場合は取引先評価に反映させることを通告されるケースも出てきています。

ただ、備前発条の場合、一足先に再エネ転換・脱炭素活動を進めたことで、しっかりとした対応が可能となり、そのことが取引先からの信頼にもつながっているといいます。

※ティア1…自動車や造船などの産業で、完成品メーカーに直接納入する1次サプライヤーの企業のこと。備前発条のようにティア1に納入する2次サプライヤー企業を「ティア2」。ティア2に納入する企業を「ティア3」という。

高級チェアPRESIDENTITYの写真
再エネ転換への挑戦から芽生えた「挑戦する気風」は
初の自社ブランド商品となる高級チェア「PRESIDENTITY」へとつながった(ホームページより)

「挑戦する気風」を育む

さらに大きかったのが社内の雰囲気、社員の意識の変化です。脱炭素にチャレンジし、一つひとつ達成していく中で、「挑戦する気風」が育まれていったのです。

例えば、電力使用量を減らすため、自動車生産にとって切っても切れない溶接回数を減らす「溶接レス」工法の確立に取り組んでいるといいます。

また、2025年12月には、初の自社ブランド商品となる高級チェア「PRESIDENTITY」を発売しました。自動車部品向けに開発した金型を、転用して製造したものです。自動車メーカーとティア1メーカーから、前例のない転用許可を得て完成させました。

「役目を終えた金型を有効利用しようという意味では、脱炭素・再エネの活動にも沿っていると思います。CO2の削減と企業の持続的な成長という二つのテーマの両立を常に考える。社内にそんな共通認識が生まれています」

山根さんはそう話します。

備前発条は今後、2050年の再エネ100%達成を目標に、まずは2030年までに再エネ率50%を目指しており、そのためにも、太陽光発電の比重をさらに高めていく方針です。

備前発条社長の山根さんの写真。経営理念の「協奏」のパネルを右に置く
「協奏」を経営理念として掲げる備前発条。社長の山根さんは、
「再エネも含めた脱炭素活動をやっていかないと、企業として生き残れないと直感的に危機感を覚えた」
と語る

防災と再エネの親和性に着目

防災の観点から再エネへの転換に取り組むことで環境問題への理解を深め、新たな事業の発展との両立を図っている企業もあります。

鳥取県鳥取市で1963年に創業した吉備総合電設は、防災設備、電気設備、電気通信設備などの工事を手がけ、県内では「鳥取で防災と言えば吉備総合電設」のキャッチコピーで知られています。2040年の再エネ100%達成を目標に、2030年には再エネ率60%を目指しています。

「防災と再エネは親和性が高い。再エネに挑戦することで環境にも優しいし、災害にも強い会社をつくることができる。さらにノウハウを蓄積することで新しいビジネスも展開できるのではと考えました」

代表取締役の山下誉議さんは、再エネ転換に踏み出した動機をこう語ります。

手探り状態からスタートして少しずつ知見を深め、2024年には本社屋上に太陽光パネル36枚を設置し、完全自家消費型の太陽光発電システムとハイブリッド蓄電池システムを導入。その後、電気自動車を購入・リースし、建物と電気自動車をつなぐ「V2X※システム」も構築しました。

2025年に新築した倉吉営業所には屋上に太陽光パネルを設置し、断熱性能も高めたことで、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物「ZEB(Net Zero Energy Building)」の認証を倉吉市内で初めて取得しました。省エネルギーの性能を評価・表示する「BELS(Building-Housing Energy-efficiency Labeling System)」でも、最高位の6つ星を獲得しています。

※V2X…Vehicle to Everythingの略。車(主に電気自動車)とあらゆる対象(家庭・電力網・他の車両・インフラなど)が電気や情報をやり取りする技術や仕組み。

吉備総合電設本社の屋上に設置された太陽光パネルの写真 PHEV車に充電する山下さんの写真
吉備総合電設本社の屋上に設置された太陽光パネル(上)、
V2Xシステムを支えるPHEV車に充電する山下さん(下)

平均年齢38歳にまで若返り

再エネ転換への取り組みは吉備総合電設にポジティブな効果をもたらしました。

一つは会社のブランディングへの貢献です。自社の再エネ関連データや防災対策をホームページで公開し、SNSでも発信すると、会社見学の依頼が舞い込むようになり、採用活動にも良い影響が出始めます。

「10代、20代の人が入社してくれるようになり、私が社長に就任した7年前は60人だった社員が今は75人に増えました。50代、60代が社員の中心だったのが、大幅に若返り、平均年齢は現在38歳です」

再エネや防災への意識の高まり、社員の若返りといった動きは、ビジネスの面での広がりにもつながっています。電気工事の会社から、「総合防災企業」へと脱皮し、その活動領域を広げようとしているのです。

島根県松江市には、「松江防災Lab」をつくり、防災を身近に感じ、学び・体験できる拠点としてオープンさせる予定です。企業や家庭向けに非常食や必要物資を備える『防災BOX』の開発・サービス展開にも乗り出しました。

2026年4月には社内に新たな組織「吉備防災ラボ」を設け、防災関連の企画やイベント、営業活動などを展開しています。

本社の多目的スペースの写真
停電時にも太陽光発電や蓄電池を活用できる本社の多目的スペースは
災害時には地域住民の拠点として活用される

地域とのつながり強め、女性活躍も

本社や倉吉営業所の倉庫や多目的スペースは、地域の防災拠点としても活用できるよう整備。地域とのつながりも増しています。防災BOXの開発は女性社員が中心的に担うなど、女性活躍の場も広がっています。

「ビジネスは思ってもみなかった方向に広がってきています。これまでに得た知見やノウハウを活用して、顧客に応じた再エネ活用や防災対策をアドバイスし、工事も請け負える。そんな会社になっていければ」

山下さんはこう強調します。

再エネ転換について語る山下さんの写真
「BCPなど防災対策や企業ブランディングなど合わせて設備投資していくのがいい」と
再エネ転換について語る山下さん

おわりに

山下さんは再エネ転換に二の足を踏んでいる企業経営者にアドバイスします。

「再エネ単独ではなく、BCPなど防災対策や企業ブランディングなど合わせて設備投資していくのがいい。当社は災害で電気が止まっても、太陽光、蓄電池、電気自動車を活用して、すぐに事業を再開することができます。1週間、1か月と業務停止すれば巨額の損害が生じることを考えれば、大きな安心材料です」

そして、こう強調します。

「再エネ転換に取り組んだことで、私自身を含め社員の意識変革がどんどんと進みました。企業にとって、これは大きいと思います」

この記事に関してのお問い合わせ先

環境省 地球環境局地球温暖化対策課