「日本の気候変動2025を用いた気候変動解説の手引き」を公表しました
気象庁では、気候変動に関する最新の観測結果と将来予測をまとめた「日本の気候変動2025」(文部科学省・気象庁)を昨年3月に公表しています。今回、本編に気候変動について解説する際の具体的な表現方法などを加えた「日本の気候変動2025を用いた気候変動解説の手引き」(以下、「解説の手引き」)を公表しました。この記事では、実務者の方が活用する際のヒントになる「解説の手引き」の中身について紹介します。
「解説の手引き」とは?
「日本の気候変動2025」は、2025年3月にトピックスでも紹介したとおり、気温、降水、海水温、海面水位などに関する観測結果と将来予測を取りまとめたものです。国や地方公共団体における気候変動対策の根拠として、また気候変動に関する解説や普及啓発の出典や参考資料として利用されています。
気象庁では、報告書の利用者からの声を参考に、2026年3月25日に「日本の気候変動2025を用いた気候変動解説の手引き」を公表しました。この資料では、「日本の気候変動2025」の内容を引用して気候変動に関する解説を行う際の表現事例(適切な表現、推奨しない表現)や説明に適した例えなどを「日本の気候変動2025」本編に直接追記する形式で掲載しています。作成にあたっては、国立環境研究所気候変動適応センターや複数の地域気候変動適応センター、地方公共団体に協力いただきました。
解説のポイントを紹介
「日本の気候変動2025」では、「過去から現在までの気温の長期変化傾向」のグラフがあります。気温のように過去からの長期変化の傾向を説明する場合、「日本の気候変動2025」では「100年当たり1.40℃の割合で上昇」(日本の1898~2024年の年平均気温偏差の場合)と記載しています。これを一般の方にわかりやすく伝えようと「100年前と比べて1.40℃上昇」とすると不正確な表現となってしまいます。そのため、「解説の手引き」では表現方法について細かくコメントで解説しています。ここでの「1.40℃」とは、特定の年に対する上昇量ではなく1898~2024年の期間における平均的な変化の割合を指します。また、使用可能な表現として「100年当たり1.40℃の上昇」(「割合で」を省略)という表現を紹介しています。
気温の長期変化の傾向についての解説ページ
「気温が上昇して飽和水蒸気量が増えることにより、雨の降り方が極端になる」という説明もよく引用されます。大雨の発生頻度増加による災害リスクの高まりにつながる解説に用いられるためです。しかし、この説明は、「飽和水蒸気量」に馴染みのない方にイメージをつかんでいただくのが難しい事項でもあります。そこで「解説の手引き」では、「飽和水蒸気量」をししおどしやスポンジの大きさに例えて、図を用いて説明する方法を紹介しています。今回、「解説の手引き」内で説明に使用している画像や動画も、報告書本体のものと併せて、素材集として気象庁ホームページに掲載しています。
ししおどしを使った雨の降り方の変化の例え
より気候変動への理解が深まる「生活への影響」情報を追加
気候の変化について一般の方に理解を深めてもらう際には、「生活にどう影響するか」を伝えることで実感してもらいやすくなります。「解説の手引き」では、環境省の「気候変動影響評価報告書(2025年度版)」(2026年2月に環境省が公表)に掲載されている影響事例を要素ごとに引用して掲載しています。
3月27日のトピックスも紹介しているように、気候変動は私たちの健康や生活など様々な面で影響を与えます。例えば降水の章では、極端な大雨の頻度や大雨時の降水量が増えたことによる洪水の発生地点数の増加だけではなく、少雨による貯水量の不足やそれに伴う用水不足といったわかりやすい生活への影響をピックアップしています。各項目から「気候変動影響評価報告書(2025年度版)」の該当ページへリンクしていますので、必要に応じて詳細を確認することができます。
気候変動影響評価報告書の引用例
日本近海の海面水温の推移について予測情報を追加
海面水温の長期的な上昇は、台風の発生や海洋生物の分布・生態系などに影響を与えることから、気候変動対策の検討に重要な情報です。「日本の気候変動2025」では、日本近海の海面水温について、21世紀末時点の予測情報を掲載していました。この度、この報告書の公表後、新たに得られた21世紀末に至るまでの海面水温の予測情報を2026年3月5日に気象庁ホームページに掲載し、「解説の手引き」内でも紹介しています。
日本近海の海面水温は、追加的な温室効果ガス削減対策がほとんど取られなかった場合(4℃上昇シナリオ)は、21世紀末にかけて海面水温が上昇し続け、約3.5℃まで上昇するとされています。一方、パリ協定の2℃目標が達成された場合(2℃上昇シナリオ)は、2060年頃に上昇が止まり21世紀末にかけてほぼ一定の約1.1℃になることが示されました。
20世紀末(1986~2005年平均)との差(℃)。図中の丸とエラーバー(青系:2℃上昇シナリオ、赤系:4℃上昇シナリオ)は10年毎に計算した20年間(前9年~後10年)の平均値と90%信頼区間の幅。陰影(青系:2℃上昇シナリオ、赤系:4℃上昇シナリオ)は、2015~2090年まで1年毎に計算した20年間(前9年~後10年)の90%信頼区間。黒線は1980~2025年までの5年移動平均した観測値。
おわりに
気象庁では、「日本の気候変動2025」をはじめ気候変動に関する情報をホームページでもまとめて紹介しています。気候変動の基礎情報のさらなる普及に向けて、今回新たに公表した「解説の手引き」もぜひ活用ください。
脱炭素ポータルでは、今後も気象庁など関係組織とも連携し、より効果的な情報発信に取り組んでいきます。
この記事に関してのお問い合わせ先
- 気象庁 大気海洋部 気象リスク対策課 気候変動対策推進室
- 電話:03-6758-3900 内線4112