沖縄の観光と環境を考慮したサイクリングシェアサービス「ちゅらチャリ」(一般財団法人 沖縄観光コンベンションビューロー)

COOL CHOICE編集部
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GPSを活用した動線分析で観光客が持つ興味の「見える化」に成功

 那覇市を訪れる観光客の行動範囲を広げ、風を感じながら街を散策する楽しみを提供するサイクリングシェアサービス「ちゅらチャリ」。GPS(全地球測位システム)の活用によって、観光客の移動経路がわかるようになったといいます。同サービスを運営する一般財団法人沖縄観光コンベンションビューローの玉城信治さんに話を聞きました。

(取材協力:一般財団法人 沖縄観光コンベンションビューロー 企画・施設事業部 企画課 玉城信治氏)

時速8kmの目線で新たな観光資源を発見してもらう

 サイクリングシェアサービス「ちゅらチャリ」の提供を開始したのは、2018年8月1日。2017年3月から株式会社ドコモ・バイクシェアなどの企業が実証実験として行っていた「沖縄バイクシェア」を、一般財団法人沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)が引き継ぎ、OCVBの事業とする際にサービス名を変更しました。
 世界の主な観光地ではシェアサイクルが盛んに行われていて、沖縄県にも導入したいという思いがありました。約1年半にわたる実証実験を経て、シェアサイクルが観光客の利便性向上に寄与することが明らかとなったため、OCVBの事業としてちゅらチャリのサービス提供を始めたのです。
 ちゅらチャリを開始するに当たり、3つの目的を掲げました。
 1つめは、「観光客の市街地でのスムーズな移動をアシストする」こと。観光客に電動アシスト自転車を利用してもらうことで利用者の回遊性が向上し、時速8kmの目線で新たな観光資源を発見してくれるのではないかと考えたのです。また、観光客が回遊することで観光施設間の連携も進み、地域の活性化を図れるとも思いました。
 2つめは、「ちゅらチャリをエコツーリズムの主流コンテンツにする」こと。先進的な観光地ではすでにそれが進められています。また、観光用途だけではなく、県民の移動手段としてもシェアサイクルを広めることで市街地の交通渋滞緩和に役立ち、ひいては車の排気ガスなどによるCO2排出量の削減にも貢献できると考えました。
 3つめは、「GPSを活用して観光客の動線分析を行う」こと。動線分析のデータを沖縄県の市町村に提供すれば、新たな観光ビジネスを生み出すためのヒントになると考えたからです。

郵便局にもサイクルポートを設置して県民の利用を促す

 現在、那覇市内16カ所に、電動アシスト自転車の駐輪拠点であるサイクルポートを設置しています。その多くはホテルの敷地内にあり、ホテルは宿泊客の利便性向上のためにちゅらチャリを活用しているのです。新たにサイクルポートの設置を要望するホテルも少なくありません。
 なお、16か所のうち7カ所は郵便局にサイクルポートを設置しています。こちらは観光客だけでなく県民にも、ちゅらチャリを利用してもらうための取り組みとなっています。
 今、電動アシスト自転車は100台用意しており、利用者は一度登録するだけで自由に電動アシスト自転車を利用できます。
 徐々にサイクルポートが増えていることもあり、利用者は増加傾向です。そのほとんどは観光客であり、3~4人のグループで利用するケースが多く見られます。観光での利用者からは、「電動アシスト自転車は思っていた以上に助力してくれるため、女性の私でも急な坂道を登ることができました」といった声が届いています。
 一方、県民の利用はまだ少ないのが現状です。しかし、郵便局にサイクルポートを設置したこともあり、県民にもちゅらチャリが認知されてきていると感じています。実際、「いつもは車で通っている道を、電動アシスト自転車で走ってみたら新たな発見がありました」といった県民利用者からの声も寄せられています。

観光客の動線分析データが新たなビジネスのヒントになる

 利用者の動線分析データにも着手し始めています。すでに那覇エリアでのデータではいくつかの分析を行い、2019年度には沖縄中部の自治体にも提供する予定です。電動アシスト自転車の利用収入だけでちゅらチャリの事業を運営していくのは難しいため、動線分析データの有料提供も視野に検討を進めていく方針です。
 動線分析による観光客の興味の「見える化」はちゅらチャリ独自の具体的な導入効果のひとつだと思っています。例えば、実証実験によってある商業施設に動線が集中していることがわかりました。外国から来た観光客がそこで買い物をしていることが考えられます。
 利用者が集中する場所で必要となるのが駐輪場です。ちゅらチャリのサイクルポートに限らず、観光客が集中する場所に駐輪場がないと自転車が放置されてしまい、見た目が悪いだけでなく、利用者の利便性も損なってしまいます。駐輪場があることで観光客はより便利に移動することができるのです。
 また、多くの観光客が、那覇市から少し離れた地域の海沿いを走っていることもわかりました。例えば、那覇市の南にある豊見城市の瀬長島や、さらに離れた南城市の海沿いにまで足を運んでいるのです。
 もちろん那覇市内にも海沿いの道はあります。しかし、電動アシスト自転車を利用することで観光客の移動距離が伸び、私たちが予想していない地域にも出掛けていることが明らかになりました。こうした情報は今後の観光ビジネスのヒントになるはずです。
 一方で課題もあります。例えば、沖縄の道路では自転車だと走りにくい場所があることです。沖縄では自転車に乗る人がさほど多くないので、これまで隠れていた問題ともいえるでしょう。都市機能のひとつとして自転車で走りやすい道路の整備が必要だと考えています。
 100台の電動アシスト自転車だけではCO2排出量の削減効果が限定的なことも課題のひとつです。ちゅらチャリの認知を向上させて沖縄の人たちがサービスを利用する機運を醸成し、道路の整備にまでつなげていきたいものです。

沖縄県全域で「ちゅらチャリ」のサービス展開を目指す

 今後は那覇市だけでなく、沖縄県全域にサービスエリアを広げていきたいと考えています。それによって、ちゅらチャリ利用者の回遊性がさらに向上するからです。また、サービスエリアが広がって電動アシスト自転車の台数が増えればCO2排出量の削減にも貢献できるはずです。
 そのためにはサイクルポートの増設が必要です。今後は那覇市の協力も得ながら、観光客だけでなく、県民にも利用してもらいやすいサービスにしていく方針です。
 また、コンビニエンスストア(コンビニ)にもサイクルポートを設置してもらえるよう現在、コンビニ各社と調整を進めています。
 OCVBは「日本版DMO」のひとつである「広域連携DMO」として、国に登録されています。DMOは「Destination Management/Marketing Organization」の略で、官民の幅広い連携によって地域観光を積極的に推進する組織のことです。
 また、広域連携DMOとは、複数の地方公共団体にまたがる区域を一体とした観光地域として、マーケティングやマネジメントなどを行うことで観光地域づくりを行う組織のことを指します。その登録を受けたOCVBは市町村の枠を超えて、ちゅらチャリを広めていくためにうってつけの団体だといえるでしょう。
 ちゅらチャリを普及させるためのOCVBの活動が実り、2019年度には沖縄中部エリアで実証実験が始まる予定です。焦らずに、とはいえなるべく早く沖縄県全域で、ちゅらチャリを利用できるようにしていきたいと思っています。

ちゅらチャリ
https://docomo-cycle.jp/churachari/

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