【有識者に聞く】気候変動対策を推し進めるグリーンファイナンス(1/2)
2024年11月11日~22日にアゼルバイジャン共和国・バクーで開催される国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(COP29)は「ファイナンスのCOP」とも呼ばれ、気候変動対策を支援するための資金拠出が最重要課題とされています。このように、世界的にグリーンファイナンスへの注目は高まっており、その取組は拡大しています。
今回は、このような動きを受け、グリーンファイナンスの概要や国内外の取組、今後の方向性について、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの吉高まり氏に解説していただきました。
グリーンファイナンスってなに?
グリーンファイナンスとは
まず初めに、グリーンファイナンスとはどのようなものでしょうか。
吉高
グリーンファイナンスとは、環境の保全や改善を金銭面から誘導する仕組みであり、金融の力で環境問題の解決を支援する活動、環境ビジネスや企業の環境活動に対しての金融サービスです。
グリーンファイナンスと一口に言っても様々な類型があります。具体的には、グリーンボンドやグリーンローン*、排出権取引やエコリース、公的機関による補助金や利子補給等の金融支援などもグリーンファイナンスの一種です。
* 企業や地方自治体等が、国内外のグリーンプロジェクトに要する資金を調達するために発行する債券(グリーンボンド)、融資(グリーンローン)
グリーンファイナンスの意義
グリーンファイナンスが重要であるとされるポイントはどこにあるでしょうか。
吉高
グリーンファイナンスは環境の課題を解決するための行動に資金を流すための方法です。通常、物の価格は需要と供給のバランスで決まりますが、その際に環境への対応コストについては考慮されないため、経済市場において評価されません。このため、意図をもってお金を流すことをしなければ、今の価格のままでは環境問題が拡大してしまうことになりますので、グリーンファイナンスで資金の流れを作ることが必要になります。
グリーンファイナンスに関連して、吉高さんが注目している取組はありますか。
吉高
ここでは、再エネ等の脱炭素の水準である「グリーン」そのものに限らず、グリーンへと移行(トランジション)をしていくためのファイナンスであるトランジションファイナンス、環境・社会・経済へのインパクトを実現するためのインパクトファイナンス、気候リスクに対応するため適応ファイナンスの3つをご紹介します。
トランジションファイナンスとは
吉高
トランジションファイナンスとは、2050年カーボンニュートラル達成のため、長期的な戦略に則り、着実なGHG削減の取組を行う企業に対し、その取組を支援することを目的とし、同時に雇用もスムーズに公正に移行する(ジャスト・トランジション)のための資金のことです。
金融庁の「金融行政方針」の中でも、サステナビリティに関する情報開示とその情報の信頼度の保証に加え、トランジションファイナンスを推進していくことが重視されています。「クライメート・トランジション・ボンド」と呼ばれる使い道をグリーンな取組や脱炭素に向けたトランジションに貢献するプロジェクトに限った債券も発行されるようになり、トランジションファイナンスは日本の政策の中で重要なものとなっています。
これまで、特に欧州ではグリーンへの高い目標を掲げてきたのですが、地政学リスクによるエネルギー価格の高騰により、CO2排出量のなるべく少ないガスなどを活用しながら、着実に段階的に脱炭素の世界に移行していく方針に変化しています。昨年のCOP28でも、各国がそれぞれの道筋を設定して、カーボンニュートラルを達成していこうという流れが示されており、世界的に合意が取れているといえます。
インパクトファイナンスとは
吉高
環境・社会・経済にポジティブなインパクトをもたらすことを意図したインパクトファイナンスという手法があります。これは、ファイナンスの後にどのようなことが起きているかをインパクトとして測る・示すことが重要であり、その手法の確立が国際的にも進んでいます。
適応ファイナンス
吉高
また、国際的に、先進国が資金提供をして気候変動を緩和していく流れがある一方で、気候変動や異常気象に対しての危機感が高まっていることから、適応ファイナンスと呼ばれる気候変動へ適応するためのファイナンスの重要性も高まっています。