専門家が考える「2030年の暮らし」
エネルギーを自給自足しながら、
コンパクトかつ開放的に暮らせる家へ

大塚 有美
All About「長く暮らせる家づくり」ガイド:大塚 有美
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新築の省エネ性能は高いが、建て替えは大変

2030年度に、日本全体で温室効果ガスを2013年度比で26%削減する、という目標があります。住宅の場合、新築については新しい省エネルギー基準や低炭素化の技術の発展などで、大きくCO2が削減できると思います。

でも、家は長く住むもの。短いスパンで最新型に替えるのは難しいですよね。住宅業界でもできる限りの企業努力をしていますが、既存の住宅では、私たちが意識を変えていかなければ、なかなか削減目標の達成は難しいかもしれません。そこで、2030年のCO2削減のキーワードとして考えられるのは、「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)」になるでしょう。

2030年の新築は、エネルギー自給が当然に

「ZEH(ゼッチ)」とは、家庭で使うエネルギーを太陽光発電などで作り、エネルギー収支をゼロ、またはプラスにする住宅のことです。2020年までに新築戸建住宅の過半数を、2030年までにはそのほとんどを、ZEHとすることを目指しています。

これまでの太陽光発電は、売電目的も大きかったのですが、今後は、売電だけではなくエネルギーの自給自足を考えていく時代になると思います。2030年ごろには、太陽光発電モジュールの価格がさらに下がり、発電効率はアップしているはず。作った電気をためておく蓄電池も、今は高額で普及はまだまだですが、将来はもう少し手に入れやすい価格になりそうです。各家庭に設置されれば、エネルギーの自給自足がもっと進むでしょう。

発電・断熱・省エネ機器をセットでCO2削減

自宅をZEHにするために大事なのは、やはり断熱です。断熱性の低い家は、冷暖房効率が悪いので作った電力がムダに使われます。「家庭で電気を作る」「しっかり断熱して冷暖房効率を高める」「LEDや省エネ家電を導入する」をセットにすれば、効率よくCO2が削減できます。

2030年ごろには、自宅で発電した電力を、電気自動車を活用して、充電と給電を相互にやり取りできる仕組みも普及するでしょう。ガソリンを使わないので、車が排出するCO2の削減に。また、エネルギーの自給で災害時の自立もしやすく、暮らしの安全にも役立ちます。

耐久性のあるコンパクトな家で、快適な暮らし

今後は、ライフスタイルや家族構成も変わっていくと思います。以前は、夫婦と子ども2人が平均的な世帯でしたが、世帯人数は減る傾向にあります。特に都心部では夫婦2人だけの世帯や単身者が暮らしやすい、コンパクトな家が多くなると予想しています。大きく豪華な家を建てて多額の住宅ローンを抱えるより、家族構成に合わせたサイズの家を建て、その分趣味やレジャーを楽しむ人が増えるのではないでしょうか。

コンパクトな住宅は建材が少なくできて、建築費も抑えられます。さらに耐久性のある家なら、メンテナンスや建て替えのコストと手間が省けるメリットも。
断熱をしっかりと施せば、間仕切りを減らし天井を高く取って、開放的な空間を作っても省エネで、気持ちよく快適に暮らせる家になるでしょうね。

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この記事を書いた人

大塚 有美
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住宅雑誌の元編集者が、住み手の目線から長く暮らせる家を探求します。