働き方変えるテレワークは、地球温暖化解決の効果も期待

産経デジタル編集チーム
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ICT(情報通信技術)を活用し、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方を取り入れる企業がICT業界で増え始めている。テレワーク(離れた場所で働く)が主な方法で、労働者の事情に応じて、働く場所と時間を柔軟に選ぶことができるのが特徴だ。これまでは、労働者のワークライフバランスの向上を目的としていたが、電力消費量や交通費などコスト削減効果も期待できることも分かってきた。少子高齢化の問題や地球温暖化などの環境問題が深刻さを増しているが、テレワークの導入促進がこうした問題への解決に役立ち、日本経済の競争力強化につながるという期待が膨らんでいる。

「国内の出張旅費だけでも、5パーセントの削減効果が確認できた」。

富士通の纐纈(こうけつ)孝彦IT戦略本部長は、社内で構築を進めているICTを活用したワークスタイル変革システムの成果に手ごたえを感じている。

テレワーク導入のメリットは経費削減の効果だけにとどまらず、不要な出張を抑えることで移動に係るCO2の削減も期待できる。ただし、離れた場所で働くためにはITの活用が必至だがそこにはシステムのセキュリティーがカギとなる。

同社はテレワークを進めていくために、「仮想デスクトップ基盤(VDI)」を柱にした情報漏えいに対するセキュリティー対策を強化した。仮想デスクトップ基盤とは、従業員が現場で使っているクライアント端末で個別に稼働させていたOS(基本ソフト)やアプリケーション、データなどをサーバ上の仮想化基盤に統合し、集中管理を行う仕組みを指す。ユーザーが使うクライアント端末に必要最小限の処理をさせ、ほとんどの処理をサーバ側に集中させる「シンクライアント環境」を容易に構築できるのが特徴だ。

さらに、なりすましなどに対するセキュリティーを整備するために、手のひら静脈認証をはじめとする生体認証機能を採用。メーカーや機種ごとに異なる複合機のドライバを仮想プリンタードライバに集約することで、利用者は出力先を意識せず、どの複合機からでも印刷を可能にするサービスも開発した。こうしたワークスタイル変革を体現できる場所として、東京・汐留の富士通本社24階に「サテライトオフィス」を設置した。将来的には、全国の事業所に拡大していく方針だ。

サテライトオフィスが広がれば、従業員は自宅や出先に近いオフィスで作業ができる=東京・汐留の富士通本社

纐纈氏は「介護や育児で在宅勤務する従業員がストレスなくビデオ会議に参加したり、外出中の営業担当者に会議で決まった事柄を伝えることができるようになる」と自信を示す。富士通は、顧客企業に対しても、こうしたワークスタイル変革を後押しするシステムを提案するという。こうした取り組みは、「グリーン・バイ・ICT」と呼ばれ、ICTサービスの積極的な開発や普及・拡大に努めることで、社会全体の環境負荷削減につなげる狙いがある。

ICT業界では、富士通のほか、NECや日本マイクロソフトなど多くの企業が「ワークスタイル変革のソリューション」事業に力を入れている。多くの企業で、育児や介護と仕事の両立が難しいとの理由で、やむなく休職や退職を選択する従業員が見受けられ、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方を選択できる環境を求める声が大きくなっていることに対応する狙いだ。さらに、テレワークの導入により、オフィススペースの効率的な運用や勤務時間の短縮に伴う空調や照明時間の短縮など、経営の効率化の効果が期待できるという期待感もある。

またICT業界では、地球環境問題への取り組みが、企業の存在と活動の必須の条件であることに留意し、地球温暖化対策や循環型経済社会の構築へ向け、1999年に「環境自主行動計画」を策定し、温暖化対策を進めてきた。2013年からは、経団連の「低炭素社会実行計画」に参画し、2020年の削減目標の達成に向け、国内の事業活動における排出削減や、エコロジーガイドライン協議会との連携、国際標準化の推進、革新的技術の開発などに取り組んでいる。

具体的には、電気通信事業者協会、テレコムサービス協会、日本インターネットプロバイダー協会、情報通信ネットワーク産業協会、ASP・SaaS・クラウドコンソーシアムの5団体による「ICT分野におけるエコロジーガイドライン協議会」を2009年6月に発足させ、2010年2月に「ICT分野におけるエコロジーガイドライン」を策定・公表している。

電気通信事業者協会の濱谷規夫企画部長は「ICT分野におけるエコロジーガイドライン協議会は、電気通信事業者において省電力化が図られた機器を調達することが有効との考えのもと、ベンダーと共同でCO2排出削減に取り組んでいるのが特徴だ」と強調する。このガイドラインでは、ICT機器の省エネ性能の評価法や基準値を策定しており、電気通信事業者の省エネ装置調達基準のベースとなるとともに、参加企業各社はガイドラインに基づき、省エネ性能の高い機器の開発を実施し、製品開発と調達の両輪でエネルギー削減に取り組んでいる。

電気通信事業者協会の緒方康裕総務部長は「ICTの発展による機器の高機能化や通信量の増加に伴い、電力使用量の増加が予想されており、ICT企業の取り組みも加速している」と説明する。

電気通信事業者協会の緒方康裕総務部長(左)と、濱谷規夫企画部長

ICT業界のこれまでの取り組みでは、ICT分野におけるエコロジーガイドライン協議会が策定したガイドラインにそった省エネ性能の高い装置の導入やサーバ・ルーターなどIP関連装置の直流給電化による省エネの推進、エネルギー効率の高い電源装置の導入や省エネ対策の推進など、優れた技術の導入を進めている。また、光ケーブルの共有や信号の多様化などの通信設備を省エネ化する技術の開発、太陽光、風力発電システムなど自然エネルギーの導入、オフィスビルにおける電力削減対策などにも力を入れている。これらの取り組みはICT自体をグリーン化する「グリーン・オブ・ICT」と呼ばれ、「グリーン・バイ・ICT」とともに「グリーンICT」をすすめる取り組みとなっている。

日本企業の技術は高く評価されており、ICT分野におけるエコロジーガイドライン協議会では、CO2削減のため、国連の専門機関である国際電気通信連合電気通信標準化部門(ITU-T)における環境影響評価手法の国際標準化に貢献しているといい、地球温暖化防止に関する活動はグローバル規模に広がっている。

今後は、ICT技術の進展に伴い、新しい技術やサービスが生まれ、人々の働き方やライフスタイルを大きく変化させるのは間違いない。効率的で環境にも優しいICTサービスを選び、積極的に導入していくことは、賢いライフスタイルに変えていく「COOL CHOICE」を考えるうえで極めて重要になるだろう。

(提供 COOL CHOICE/環境省)

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