気象予報士に教わる、
これからの天気と私たちにできること<第4回>

COOL CHOICE編集部
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第4回:NPO法人 気象キャスターネットワーク
気象予報士 依田司さん

NPO法人 気象キャスターネットワークに所属する、気象予報士の皆さんにご登場いただくインタビュー連載企画。第4回は、テレビ朝日『グッド!モーニング』の「お天気検定」や「お天気中継」でおなじみの依田司さんにお話を伺いました。気象キャスターとして20年目の春を迎えるベテランであり、気象キャスターネットワークには設立当初から参加しているという依田さん。テレビだけでは伝えきれないことをダイレクトに届けたいという思いから、小学校への出前授業や講演を行うなど、地球温暖化防止コミュニケーターとしても精力的に活動していらっしゃいます。

※地球温暖化防止コミュニケーターとは
https://ondankataisaku.env.go.jp/communicator/#section_about

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2017年の夏は暑くなる!?

―2017年の春夏は、どんな気候になりますか?

2017年の冬(12~2月)は、1月半ばの寒波が印象的だったものの、全国的には暖冬でした。そして2017年の春夏も引き続き、気温が高くなると予想されています。特に西日本は暑い日が多く、夏は猛暑日も増えそうです。その根拠となる海洋と大気の特徴についてお話しすると、主に東南アジア周辺海域の海水温が高くなると、上昇気流とともに積乱雲が発生し、循環するように、下降気流がチベット高気圧や太平洋高気圧を強めるとみられています。このため、偏西風が北に蛇行し、暖気の影響を受けやすくなるからです。

―2017年は猛暑ですか…。何が起きているのでしょうか。

一般的に、エルニーニョ現象の時は暖冬冷夏に、ラニーニャ現象の時は厳冬猛暑になると言われますが、経験的にその確率が高いことが分かっています。現在はエルニーニョ現象もラニーニャ現象も起きておらず、夏にかけても発生しない見込みです。にもかかわらず猛暑予報が出ているのは、通常状態での気温が底上げされてきているからと言えるでしょう。

―冬や夏だけでなく、春も気温が上昇しているのですか?

そうですね。地球温暖化というと夏の猛暑や冬の暖冬が分かりやすいのですが、春にも影響が出ています。例えば東京の3月の平均気温を見てみると、100年前は7℃前後で、今は10℃くらい。約3℃上昇しているんですね。7℃というと、現在の東京のほぼ2月の平均気温に相当します。ここ100年で「春が1カ月来るのが早くなった」ともいえるでしょうね。このことは私たちの生活とも関係していて、雪が少なくなることによる春の渇水や、実は花粉症などにも影響を与えています。

スギ花粉の量と花粉症の患者数が、ここ20年で約2倍に!

―気温が高くなると、花粉症にどういう影響がありますか?

「花粉温度計」という言葉があり、1月からの最高気温を足しあげて合計400℃を超えると、花粉が飛び始めると言われています。つまり、1月に暖かな日が続けば、花粉も早く飛び始めると言えるでしょう。暖冬の年、花粉症の方は2月初めくらいから気をつけ始めたほうがいいかもしれません。

―そもそも、花粉症の方が増えている気がします。

確かに、花粉症患者はここ20年で関東では約2倍に増えています。今、日本人全体の約30%が花粉症で、そのうちスギ花粉症が約8割を占め、日本人の25%です。一方、花粉の飛散量もここ20年で約2倍に増えました。これは無関係ではないでしょう。

―スギの木が多過ぎるのが原因でしょうか。

そうかもしれません。とはいえ、「スギの木を減らせばいい」という単純な話でもないんです。日本は、2030年度の温室効果ガス排出量を、26%削減する目標を掲げました。そのうち2%は森林に吸収させる見込みです。となると樹木をむやみに減らすわけにもいきません。さらにスギは、他の樹木に比べてCO2吸収率が高いこともあって、無花粉スギの研究・開発や植樹が進められています。また、同じスギでも老木はCO2吸収量が少ないですから、伐採して若木を増やしていくなど、上手にやりくりしていく必要があると思います。

―このまま地球温暖化が進むと、どんな影響が出るのでしょうか。

スギの木もソメイヨシノと同じように、冬の寒さにさらされることで春に向けての準備にとりかかります。スギが花粉を飛ばすためには、スギが寒さにより休眠から目覚める「休眠打破」が必要であり、2100年に地球の平均気温が4℃以上上がった場合、平野部のスギは冬の寒さが足りなくなり、花粉を飛ばす時期が逆に遅くなるとみられています。一方、それでも山間部は平野部と比べ平均気温が低いため、花粉飛散の時期は、今とさほど変わらないと言われています。そうなると、今はタイムラグがある平野部と山間部の花粉飛散が同時期に起こる可能性があり、結果として飛散する期間は短くなりますが、飛散量がとても多くなることが予想されます。より一層、春がつらい季節になる方が増えてしまうかもしれませんね。

お話を伺って

2017年春夏は、気温が高くなり、猛暑日も多くなるかもしれないこと。そしてそれは「異常」気象ではなく、「通常」状態で起きている気象で、気温が「底上げ」されつつあることや、また、スギ花粉の量と花粉症の患者数も増えていることなどを伺いました。春は夏と比べると、地球温暖化の影響が体感しづらい印象でしたが、お話を聞いていくうちに危機感が芽生えてきました。これ以上、春を過ごしにくい季節にしないためにも、依田さんたち地球温暖化防止コミュニケーターによる、取り組みや働きかけに耳を傾け、低炭素社会実現につながるアクションを続けていきませんか?

依田 司さん

NPO法人 気象キャスターネットワーク 所属。テレビ朝日『グッド!モーニング』の「お天気中継」では、全国各地の空模様を、ほぼ毎回生中継している。「森林インストラクター」の資格も取得しており、自然体験活動のボランティア活動にも参加。かつては、テレビ朝日屋上に設置されている装置で、花粉の観測もされていたという。

NPO法人 気象キャスターネットワーク
http://www.weathercaster.jp/

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