家電のお店にエコなライフスタイル「賢い選択」の先導役登場
電気を「かしこく使う」(省エネ)、「つくる」(創エネ)、「ためる」(蓄エネ)という3つの心がけで、エネルギーを無駄なく効率的に利用できる家電の「賢い選択」が、家庭の温室効果ガス削減のカギを握っている。そんな中、エコなライフスタイルを具体的に勧めてくれる家電と家のスペシャリスト「スマートマスター」資格制度が2016年に新設された。家電製品や住宅、自動車などさまざまな「モノ」がインターネットにつながるIoT(モノのインターネット)時代に大きく変わる消費者の選択の疑問に答える心強い相談役としても注目されそうだ。
「スマートマスターは、家電製品や住宅設備はもちろん、家の構造・性能に関する知識からエネルギーマネジメントまで、さまざまな製品やサービスを組み合わせる横断的な情報をお客さまに提供することができる。当店の全従業員に取得してもらいたい」。こう話す上新電機板橋前野店(東京都板橋区)の上野素嗣店長は、自らも2016年9月に実施された初回の試験で合格したスマートマスターの資格保有者だ。
スマートマスターは、インテリジェント化する家と家電のスペシャリストを認定する資格制度。環境省が省エネ・低炭素型の「製品」など温暖化対策に資するあらゆる「賢い選択」を促す国民運動「COOL CHOICE」に協力し家電製品に関する普及啓発などに取り組む一般財団法人家電製品協会(東京都千代田区)が認定する資格で、毎年9月と3月の年2回試験が実施される。「スマートマスター」の資格学習用のテキストを購入し、勉強するやり方が一般的だ。「スマートハウスの基礎」と「家電製品」の2科目ともに140点以上(200点満点)を取得することが求められている。2016年9月の初回の試験で約1600人が合格し、すでに家電量販店の店頭などで接客している。2017年3月には2回目の試験が行われた。
今後、普及が進むことが期待されているスマートハウスは、IoT技術を駆使することで、住宅メーカー、電力・ガスなどのエネルギー供給事業者、電機メーカー、住宅設備事業者、通信事業者などさまざまな事業者が、それぞれの技術や製品、サービスを提供し、家庭のエネルギー消費効率の改善や、生活者の利便性・快適性・安全性の向上に力を入れていくことになる。家電製品協会の伊藤章専務理事は「スマートハウスを普及させるには、消費者との接点として、業界横断的な共通知識を持つ人材の育成が欠かせないと考えた」と資格制度新設の背景を説明する。
「10年前と比べ、家電製品をめぐる環境は大きく変わっている」と伊藤専務理事は言う。家電業界は、冷蔵庫やエアコンなどの家電製品を省エネ性能の高いものに買い換えることで、消費電力量を抑え、ランニングコストを削減できるという経済的なメリットを押し出して、買い換え需要を刺激してきた。例えば、24時間365日働き続ける冷蔵庫は、家電の中でも最大の消費電力量だが、効率よく運転するインバーター制御と高性能断熱材などで省エネ効果が大きく向上している。また、電球型LEDランプは、一般電球と比べると、消費電力量は約6分の1で済むなど省エネ家電への買い換えが、家庭の継続的なエネルギーコストの抑制につながるというわけだ。
一方で、2011年3月に発生した東日本大震災と福島原子力発電所の事故をきっかけに、消費者の消費エネルギーを抑えたエコライフへの関心はますます高まっているという。住宅用太陽光発電システムなどを使った創エネと、蓄電システムを使って太陽光などのエネルギーを充電する蓄エネ技術の発達で、昼夜問わず必要に応じて電力を取り出せるとともに、予期しない停電のときなどにも使うことができる。伊藤専務理事は「こうしたスマートハウスの普及を進めることが、パリ協定で求められている地球温暖化の防止に効果的であることは間違いない」と強調する。
日本は2030年度の温室効果ガスの排出を2013年度と比べて26パーセント削減する目標を国際的に約束しており、平成28年5月に閣議決定した地球温暖化対策計画における中期目標としている。地球温暖化対策計画においても、「温室効果ガスの排出は、社会システムやライフスタイルの在り方及び国民一人一人の行動に大きく左右される」とされており、排出削減のためには、エネルギー需要側における対策も非常に重要である。
エネルギーの使用量を減らす対策については、業務部門(ビル、オフィス、商業施設など)と並び、家庭部門の対策の重要性は高い。東日本大震災に伴うエネルギー費用の高止まりが、家庭での省エネ意識の高まりを後押ししている側面もある。実際、家電販売の現場でも、東日本大震災以降、省エネ家電や創エネ、蓄エネなど家庭でのエネルギー消費の問題に敏感な買い物客が増えているという。
上新電機板橋前野店の店員、加藤嘉記さんは同店の上野店長とともに、初回の試験でスマートマスターを取得した。加藤さんは「スマートマスターの資格取得の勉強をしたことで、今まで詳しくなかった家の構造や性能に関する知識も備えることができ、お客さまに、より自信を持って商品やサービスをお勧めすることができるようになった」と胸を張る。
家電販売の現場では、前述の上新電機やビックカメラ、ヤマダ電機などをはじめ、地域の電器店など日本全国でスマートマスターがいるお店が増えてきており、エネルギー問題の関心が高まる消費者と、さまざまな業界が推し進める省エネ・低炭素化社会にむけた架け橋の役割を期待されている。それだけに、スマートマスターたちが、エネルギーを無駄なく、効率よく利用できる暮らしを、それぞれの生活者のライフスタイルに合った形で提案できるか、そして生活者が「賢い選択」をできるかが極めて重要といえる。
(提供 COOL CHOICE/環境省)
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