気象予報士に教わる、
これからの天気と私たちにできること<第9回>
第9回:NPO法人 気象キャスターネットワーク
気象予報士 榊 菜美さん
NPO法人気象キャスターネットワーク会員の、気象予報士の皆さんにご登場いただくインタビュー連載企画。第9回は、日本テレビ「Oha! 4 NEWS LIVE」の気象キャスターとして活躍されている、榊 菜美さんです。6年間アナウンサーを務めていた北海道で、気象予報士への転身を決めたきっかけや想い、地球温暖化について子供たちに伝えたいことなどを伺いました。
「全国向けと関東向け、情報発信のバランスが難しいです」
●全国のお天気をお伝えするなかで、関東エリアの特徴はありますか?
私が現在担当している番組は全国に向けた情報番組ですが、視聴者の多くは首都圏エリアの方々なので、お天気情報もお伝えするバランスに注意しています。関東地方は背の高い山に囲まれている影響もあって全国から見ると暑さや寒さが一歩遅れがちで、全国の予報を伝える中でそれをどう短い言葉で伝えるか・・・・・・。首都圏にいる自分たちの実感と、全国の方の実感がずれてしまわないように言葉を選ぶのが難しいです。
他にも関東では、今年よく「竜巻注意情報」「記録的短時間大雨情報」といった情報をお伝えしました。実際に件数が増えたというより、基準を引き下げたり区分を細分化したからなのですが、その対策自体が、より多くの情報をより早く出して注意を促そう、という「災害が起こりやすくなった現状」を表しているのだと思います。竜巻に関しては、視聴者投稿が多くなったおかげで、いままで「ここで竜巻が起きたかもしれない」という推測だけだったものが、今後は映像が残るので「この気象条件で本当に竜巻が起きた」というデータが蓄積でき、予想がしやすくなります。みなさんのご協力がありがたいですね。
「確かな知識を持ってお伝えしたい!と資格取得を目指しました」
●気象予報士を目指したきっかけは、どんなことだったのでしょうか?
北海道のテレビ局で6年間、アナウンサーをしていたのですが、一念発起して気象予報士の資格を取り、気象キャスターに転向したんです。きっかけは、2013年3月2日の道東の暴風雪災害でした。雪に慣れているはずの北国で9人もの方が雪で亡くなってしまったことが大きな衝撃でした。当時私は朝の情報番組で、気象予報士が書いてくれるお天気情報を読みあげて注意喚起していました。
予報士さんたちは「災害を未然に防げなかったことが予報士としての大きな後悔だ」と狼狽されていて、悔しかったのはどの点だろう、こうなることがある程度予測されるという知識を私自身が持っていたら違ったのだろうかと、それから「気象の勉強をしたい!」と思うようになりました。
雪による荒天がよくある北海道からしても、あのときの爆弾低気圧は強烈だったと、資格を取ったのちにデータを見てわかりました。夏も冬もこれまでになかったような気象災害が起こる今、地元の方々でも「この土地の天気に慣れているから大丈夫」という自負を捨てなくてはいけない時があると思います。
この一件から私は、「せっかく伝える技術を持っているのだから、知識を身につけて事態の重大さを伝えられるようになりたい」「自分の専門を見つけよう、30代でやるべきは天気だ」と決意しました。
受験勉強はとっても大変で、豚肉のアク取り中にそれが気象衛星の雲に見えてきて・・・・・・ノイローゼになりそうでしたね。でも無事に合格でき、資格取得と結婚のタイミングが重なって大きな転機でしたが、以来、移り住んだ東京で気象キャスターの仕事をさせていただいています。
「地球温暖化=ずっと先のこと。ではないことをお伝えしていきたいです」
●地球温暖化防止コミュニケーターになられたそうですが、やりがいを感じているのはどんな点ですか?
先輩気象予報士の強い勧めもあり、地球温暖化防止コミュニケーターとしての活動も始めたところです。正直言うと私はそれまで、気象予報士のこうした活動を知らなかったのですが、天気と地球温暖化は密接に関係していて勉強になるなと、ますます興味が深まっています。
小学校への出前授業や親子イベントにも参加しました。5〜6年生だと冷めた感じかなと思ったのですが、子供たちは「うそだー」と素直に驚いた後、うるさかった子たちも静かに耳を傾けてくれて、手応えを感じました。「このままだと地球の温度が2度くらい上がっちゃいます。それはいつ頃でしょう」との問いに、「2500年!」などと子供らしい予想が返ってきますが、「そんな先じゃなくて2040年、まだみんな30歳くらいだよ」と伝えると、身近なことなんだと気づいてくれます。後日、お母さんたちから「すごくいい経験になりました」とメッセージをいただくことがあって、イベントをきっかけに親子で地球温暖化対策の問題について話をしたり、考えたりしてくれるようになったんだなと嬉しくなりました。忘れずにずっと継続してもらえるように、子供のうちからの習慣化が大事かもしれませんね。こうしたイベントは子供たちの反応が面白いですし、今後も続けていきたいです。
●では最後に、ご自身で心がけているクールチョイスな取り組みを教えてください。
親子イベントではお母さんたちも、地球温暖化対策が「節約」につながるという点で、例えば、便座の温度を下げるかフタを下げるか、どちらが得か?というクイズに興味津々な様子でした。私自身も主婦なので節約につながるクールチョイスを積極的にやっています。暖房は我慢せずにつけるけど、日の当たる時間帯は自然光を入れて部屋を暖めておくなどちょっとした工夫です。買い物では地産地消を心がけていますし、シャンプーなどの消耗品は詰替え用を購入しています。会社でもなるべくエレベーターより階段を使うようにしているのですが、日テレの階段にはクイズなんかが貼り出されているので面白いんですよね。クールチョイスをしていたら、ついでに節約やカロリー消費もできちゃいました、というのが良いかな、と思っています。夫はその辺の意識がまだ甘いのですが、その代わり、暗いのが苦手で照明をつけたままにしてしまう私の後から、彼がスイッチを消して回ってくれていることがあるので、実はお互いにフォローしあえているのかもしれません。
今後、夫の仕事の都合で海外へ行く可能性が高いのですが、そうなったときのために考えているのは、日本で学んだことを海外に住む日本の子供たちにも伝えられたらいいなということです。さらには、せっかくなら海外での事情なども見聞きして、帰国後にお伝えできることを持ち帰ってこられたらと思っています。
親子イベントについてはこちら(今年度の申込みは締め切りました)
(NPO法人気象キャスターネットワークホームページ http://www.weathercaster.jp/event2017moe/)
お話を伺って
アナウンサーから気象キャスターへ転身してから、ますます「伝える言葉」を大切にされている榊さん。地球温暖化による様々な現象はずっと先の未来に起こることではなく、既に始まりつつあります。「だからこそ今日、明日できることから始めてほしい。まずは情報を得るために天気予報を見てほしいです」と呼びかけています。まずはみなさんも、地球温暖化防止コミュニケーターが発する情報に耳を傾けて「いまできること」について考え、実践してみませんか?
榊 菜美さん
NPO法人 気象キャスターネットワーク会員。北海道文化放送でアナウンサーとして活躍しながら気象予報士資格を取得。結婚と同時に東京へ移り、現在は日本テレビ気象キャスターとして「Oha!4 NEWS LIVE」などで全国のお天気をお伝えしながら、2017年からは地球温暖化防止コミュニケーターとして小学校への出前授業や親子イベントに参加するなど、積極的に活躍中。
NPO法人 気象キャスターネットワーク
http://www.weathercaster.jp/
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