過度に冷房を使わなくても快適に過ごす工夫「クールビズ」。クールビズは、夏の冷房時に室温28℃で快適に働くことが出来るライフスタイルの提案として立ち上がりました。当時はクールビズの代表的なワークスタイルとして「ノージャケット・ノーネクタイ」にフォーカスし、急速に浸透してきた経緯があり、ビジネスファッションはクールビズの原点と言えます。そこで今回は、紳士服を中心とした企画販売を行う株式会社AOKI、青山商事株式会社の2社にご協力いただき、クールビズの原点であるビジネスファッションの切り口で2016年のクールビズを総括します。

2016年のクールビズファッションは、スーツスタイルなどが必要なビジネスシーンにも対応

クールビズファッションは、立ち上がり当初に「ノージャケット・ノーネクタイ」がフォーカスされ、夏のビジネスシーンでのフォーマルウェアとして定着しました。その一方で、今年はTPOに応じ、ジャケットやネクタイを着用するスタイルがうかがえました。
「クールビズ期間と言えども、TPOに応じ、スーツスタイルなどのジャケットやネクタイを着用するスタイルへ回帰する傾向が見られました」(株式会社AOKI広報室免田操佳さん)
「ビジネスシーンでは、大切な商談や会議のときはスーツスタイルにネクタイを締める必要がある場面があります。単純に『暑いからスーツを着ない、ネクタイを締めない』発想から、『必要なときだけスーツとネクタイを着用する』発想を、商品企画に取り入れる必要がありました」(青山商事株式会社広報室岡田希之室長)
今年のビジネスファッション業界では、このようなニーズに対応し、ジャケットやネクタイを着用する必要がある大事なビジネスシーンを意識しながらも、快適に過ごせるスタイルが、今年らしいクールビズとして提案されました。

ジャケット着用のスタイルでクールビズ売り場を展開
持ち運んでもシワになりにくいスーツ、汗のニオイが気にならないシャツが好評!

ビジネスにおいてスーツスタイルなどが必要なシーンを想定したときに、まず多くの方が思い浮かべるのは、取引先まで訪問し、大事な商談や打合せをするシーン。自社内にいるときや移動中はジャケットやネクタイを着用せず、訪問先に到着してからジャケットやネクタイを着用することを想定し、カバンに入れたり、腕にかけて持ち歩いても大丈夫なシワになりにくい素材のスーツが展開されました。青山商事では、カバンの持ち手に引っ掛けるためのループを取り付けたスーツや、あらかじめ結び目を固定して必要なときに素早く着用できる「ワンタッチネクタイ」も、必要なときだけネクタイを締められる便利なツールとして好評だったとのことです。
また、訪問した後に上着を脱ぐことも考えられます。上着を脱いだときに、シャツやパンツのシワが気にならない素材を使ったスタイルや、こもった汗のニオイが気にならない防臭機能へのニーズが高まったようです。
近年では通気性や接触冷感などの機能にこだわったビジネスシャツが人気を集めていますが、今年も引き続き様々な種類の機能性シャツが展開され、特に手入れがしやすいノーアイロン仕様のシャツの人気が高まりました。AOKIでは、通常の夏仕様の生地よりも約3倍の通気性があり、洗濯機で洗って干すだけでアイロンがけをしなくても、シワが気にならない「ハイスペックノーアイロンシャツ」を展開。また、忙しいビジネスマンに向けて「洗える」利便性にも着目し、自宅の洗濯機やシャワーで丸洗いできる「本当に洗えるスーツ」が展開されました。

洗って干すだけでアイロンがけが不要なビジネスシャツが好評

また、ライフスタイルに寄り添った店頭の訴求にも工夫が凝らされました。例えば、AOKIでは「洗える」機能を訴求し、青山商事ではスーツとネクタイを着用しながらも、暑さを軽減できる商品の提案行いました。
「具体的な着用シーンや、機能性を動画、写真、現物などのビジュアルで理解していただくように工夫しました。特にスーツの『洗える』機能性を実感していただくために、10回以上洗濯したスーツを店舗にディスプレイし、洗濯後の質感をお客様に実際に感じていただけるようにしました」(AOKI 免田さん)
「単純に『ノージャケット・ノーネクタイ』にするだけがクールビズスタイルではなく、TPOに応じ、夏のビジネスシーンにふさわしい着こなし・身だしなみをお客様にアドバイスしています。必要な場面ではスーツとネクタイを着用しながらも、暑さを軽減できる商品の提案でクールビズの普及促進につなげています」(青山商事 岡田室長)

「洗える」機能性を実感できるように、洗濯機や10回以上洗濯したスーツをディスプレイ
クールビズが地球温暖化に貢献するプロセスを伝え、
多様化するビジネスニーズに対応する

このように、クールビズを推進するビジネスファッションが提案する機能性・利便性はますます充実してきました。両社は今後、さらに一歩踏み込んだ展開を見据えています。
「クールビズに対するお客様の認知は浸透してきましたが、クールビズに対応した商品やサービスを、特別に意識して消費活動をしているわけではないと感じています。クールビズ商品やサービスが、どのように地球温暖化対策につながるのか、そのプロセスを『見える化』して伝えていければと考えています」(青山商事 岡田室長)
「クールビズを実践することが『涼しくて快適』なだけではなく、消臭機能のあるシャツならば『上着を脱ぐことに躊躇がない』、丸洗いができるスーツやシワになりにくいシャツなら『クリーニング代の節約』『時短』などのメリットがあります。『夏を涼しく過ごす』だけではなく、お客様のニーズを満たす商品を今後も開発・展開していくことにより、クールビズの普及促進に貢献していきます」(AOKI 免田さん)

2016年のビジネスファッションのクールビズは、従来の「ノージャケット・ノーネクタイ」とは異なるトレンドとして、TPOに応じ、ジャケットやネクタイの着用が必要となるビジネスシーンへ対応するニーズが見られました。そのニーズに対応するために「必要なときだけ着用しやすい、シワになりにくいスーツ」「上着を脱いでもニオイが気にならないシャツ」などの商品が展開され、好評を博しました。
各社は熱遮蔽や通気性、接触冷感などの研究開発を進め、夏季に「涼しくて快適」な機能性の追求を行っています。加えて、さらなるクールビズの普及促進のためには、ライフスタイルや実際の需要に即した提案をすることが重要です。今後も多様化するビジネスシーンのニーズにきめ細かく対応した展開を期待できそうです。