8月も最終盤。クールビズ期間も残り1ヶ月余り。地域によっては、そろそろエアコンが不要になっているところも・・・。とはいえ、まだまだ冷房を必要とする地域では、夏の疲れや夏バテ対策を踏まえ、適切な冷房使用が体調管理のうえでは重要です。特に外回り中心の人、デスクワーク中心の人と業務形態が異なる人が混在するオフィスでは、体感温度には個人差があることから、室温管理はなかなか難しいものです。そのようなオフィス空間でみんなが快適に、そして健康に仕事をするためには、室温設定等をどうしたら良いのでしょうか。医学的な観点からのアドバイスを、マブチメディカルクリニックの馬渕知子院長にお聞きしました。

夏の「冷え」を訴える男性も増加中

私が産業医として関わっている企業で最近よく聞くのは、男性からの冷えについての訴えです。実際、男性向けの冷え対策グッズなどもよく売れているそうで、もはやオフィスの冷房に悩んでいるのは、女性ばかりではなくなってきているのですね。

もうひとつ気になっているのは、最近は低体温の人が増えていること。体の基盤は4~5歳までに作られますが、生まれたときから空調の効いた環境に慣れていると、体温調整機能が成長しなくなる傾向があり、低体温にもつながる可能性があります。こうした低体温や冷えがもたらす健康面への影響は無視できません。血流が悪くなり、頭痛・生理痛、腰痛や肩こりなど痛みの原因になりますし、むくみやくすみ、自律神経の乱れから精神バランスを崩したり、不妊の原因になったりと、様々な体のトラブルを引き起こしかねないのです。

暑い人より寒い人にピントを合わせて

人間は、「暑さ」に対しては汗をかくことで体温調整がしやすい一方、「寒さ」への対応は苦手な動物です。オフィスなど人が多く集まる場所では、暑い人に合わせて冷やすより、寒い人に合わせて室温設定を高めにするほうが、人々の体調への悪影響が少なく健康的なのです。

そもそも暑さ・寒さを感じて「体を温めよう」「体を冷まそう」と体温調整を行うのは自律神経の働きによるもので、自力でコントロールできるのは温度差の変化が5度程度までと考えられます。それ以上の温度差になると、対応しきれず不調をもたらす場合があります。屋外と室内の温度差が開きすぎないよう注意することも必要です。

また、人が暑さ・寒さを感じるセンサーは皮膚にあり、個人差はありますが、そのセンサーには湿度も関係してきます。ですから、オフィスの室温や湿度を意識した環境管理も大切。

季節や天候はもちろんですが、風通しや照明の強さ、電子機器類からの発熱、オフィスでの席の場所などでも大きな違いがあります。サーキュレーターの使用や電子機器類の配置の工夫など、体が心地よいと感じる環境をつくるように心がけると良いでしょう。

適温で涼しく過ごすコツ

オフィスの設定温度に「まだ暑い」と感じる方に、私がよくおすすめしているのはデスク用の小型扇風機です。個別に設置できますし、皮膚で感じる体感温度をグッと下げてくれます。うちわや扇子であおぐ方法もありますね。

ほかにもオフィスで涼しく快適に過ごすコツをいくつかご紹介すると、外回りなどで汗をかくことを想定して、着替えを用意しておくのも賢い選択です。最近ではサラリとした着心地の高機能繊維でできたインナーなどもたくさんあります。カラッと乾いた衣服に着替えることで、肌も気分も快適になります。

冷感グッズなども様々なタイプがあるので、活用されてもいいですね。例えば、ひんやりした座面シートは、熱を持ちやすい大きな筋肉である大腿部を冷やすので効果的。かなり涼しく感じるはずです。

勤務時間の朝方シフトもいい考えですね。満員電車を避けることで、暑さもストレスも軽減できます。

「室温」へのちょっとした気配りが健康の基盤

オフィスで働くのは自分ひとりだけではありません。暑がりの人もいれば、寒がりの人もいます。体質や体調によっても、温度の感じ方は変わります。そのような中で、自分の体に合わせた室温管理をするのは難しいもの。

そこで実践していただきたいのは、自分のため、周囲のための「室温」への気配りです。まずは自分のための温度調整が重要になります。上着やひざ掛けを常備する、デスク用の扇風機を設置するなど、自分に合わせた体温管理ができるグッズを充実させることはおすすめです。そして、次に目を向けていただきたいことが周囲のための室温管理です。オフィスの室温や湿度などを定期的に測定したり、同じオフィスで働く仲間の意見を聞くなど、健康面でも働きやすい環境をつくっていくことが大切です。

そのような気配りが、働く上での健康管理の基盤のひとつになるはずです。

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